デジタルハリウッド大学は、映画『MW-ムウ-』の岩本仁志監督と松橋真三プロデューサーを招き、特別講義「手塚治虫生誕80周年記念映画『MW-ムウ-』の監督・プロデューサーが語る製作誕生秘話」を開催した。
講演を行った岩本監督は、日本テレビに所属し、『女王の教室』(2005)や、『野ブタ。をプロデュース』(2005)、『ギャルサー』(2006)など、数多くの人気ドラマの演出を手掛け、現在は『華麗なるスパイ』の演出を行っている。一方、松橋プロデューサーは、映画『バトル・ロワイアル』(深作欣二監督/2000)の共同プロデュースをはじめ、玉木宏が主演を務めた映画『ただ、君を愛してる』(新城毅彦監督/2006)や『KIDS』(荻島達也監督/2008)などを手掛けたプロデューサーだ。
手塚治虫の原作は、発売当時その内容の過激さやテーマの衝撃性から、「映像化は不可能」とまでいわれてきた。岩本監督と松橋プロデューサーはこの作品の映画化をどう実現していったのであろうか。
映画における音楽のもつ重要性
岩本監督はこの作品をアメリカの人気ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のような作品に仕上げたかったのだという。それは、『24 -TWENTY FOUR-』に、ヒットに繋がる重要な要素が含まれていたからだと語った。
「アメリカのTVドラマは、基本的に音楽が少ないんです。ところが『24 -TWENTY FOUR-』では、シーズン3~4になると1話46分のうち、約40分間は音楽が鳴っています。ずっと映像を見続けるには、音楽でひとつのストーリーを見せていくのが大事なんです」
このような理論に基づき、映画『MW-ムウ-』では全編129分のうち、100分以上音楽を流している。また、ハリウッド映画『トランスフォーマー』(2007)などのアクション映画を鑑賞し、感動して泣くことができるのは、音楽で色々な感情を促しているからだと語った。
撮影時の工夫
この作品の撮影は、日本とタイで全80日間かけて行われた。タイを撮影場所に選んだ理由は、映画『ランボー』などのハリウッド映画が多く撮影されており、ハリウッド映画制作用の撮影機材(クレーン、照明など)を多く所有しているからだ。また人件費が安いこともあり、大掛かりな機材を必要とする撮影に関しては日本よりも安く撮影することができることも要因のひとつに挙げた。さらに、街中でのカーチェイスシーンや、実弾(空砲)を使った撮影など、日本では物理的に不可能に近いシーンの撮影もタイでは可能で、特に実弾(空砲)が撃てることは、迫力のある銃撃シーンを撮影するためにとても重要なポイントであると語った。
ほかにも、海に潜るシーンの撮影は、水深約2~3mの東宝のプールで撮影したというエピソードや、アメリカ軍基地のシーンをタイ軍の全面協力で撮影したというエピソードなど、様々な映画制作の秘話を披露した。
この講演の最後に岩本監督は、日本人が力を合わせればハリウッド映画並みの作品をハリウッド映画の制作費よりかなり小額で実現できると、日本の技術力の高さを訴えた。また松橋プロデューサーは、ヒットする題材を映画にする今の日本の映画制作とは違い、今まで誰もやらなかったような新しい作品を今後、制作していきたいと語った。
(C) 2009 MW PRODUCTION COMMITTEE
MW-ムウ-
島民全員が死亡する事件を目の当たりにしながら、偶然にも生き残ったふたりの少年、結城(玉木宏)と賀来(山田孝之)。事件から16年後、賀来は教会の神父になり、結城はその事件を隠蔽した関係者を次々に殺害していく冷徹な殺人者になっていた……。主要キャストは玉木宏、山田孝之、石田ゆり子、石橋凌など。