国内市場の飽和などから、グローバル化を進める日本企業が増えている。これに伴い、国内ITベンダーもグローバル化を余儀なくされており、事業戦略の柱にグローバル化を据える傾向が強まっている。国内大手の独立系ITベンダーであるITホールディングスグループ(以下、ITHD)もそうしたベンダーの1つだ。今年6月、本格的なグローバル化の推進を見据え、英国ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ(以下、BT)と提携した。今回、「両社がどのような背景で提携を行ったのか」、「提携によって何を実現しようとしているのか」、ITホールディングスの事業推進本部事業企画部部長兼国際部担当部長の黛文彦氏に話を聞いた。

初めに、黛氏はITHDとBTが提携するに至った背景について説明した。ITHDとしては今回の提携により、「海外事業戦略」、「新規事業戦略」、「これら2つの戦略を実現するためのスピード・コスト・競争力を確保」の3点を推進したいという。

海外事業戦略の推進では、特に日本企業の海外進出の支援に重きを置いている。というのも、同社は中国を中心に東アジアには進出しているが、それ以外の地域には拠点がなく、これまで顧客が海外に進出してもサポートができない状況だったからだ。そこで、現地で提携できるITベンダーを探していたというわけだ。

「現在、日本企業ではコンプライアンスや国際会計基準といった点から、海外拠点のサポートが問題になっている。加えて、海外拠点の予算が管理しきれていないというコスト面の問題もある。当社としては、国内で提供しているきめ細かなサービスと同等のサービスを提供したい」

これはBT側も同様だという。欧米ではシェアを獲得できているが、欧米と並んで世界的に重要な市場である日本・中国・インドは攻めきれておらず、市場の開拓を狙っていた。

また、新規事業戦略における「新規事業」とは、クラウドやPaaS(Platform as a Service)といったビジネスプラットフォーム事業を指す。同氏は、「クラウドやPaaSといった事業はコストなどの競争に加え、事業展開のスピードを考えると、一ベンダーが単独で取り組むのは難しい。当社としては、グローバルで先進的なパートナーを探していた」と語る。

一方、BT側はネットワークベンダーからITサービスベンダーへの脱却を図ろうとしていた。同社は、自社のサービスをシステムに組み込むためのSDKを提供するというビジネスを欧米で展開しており、それを日本でも展開しようとしているのだという。

このような両社の事業戦略が相まって、提携に結び付いたというわけだ。

「BTは提携先として複数の日本のベンダーと交渉していたようだが、当社が"独立系のベンダーである点"、"経営統合して企業規模が大きくなった点"、"テレコム関係の技術者がたくさんいる点"などに魅力を感じ、当社と提携することに決めたそうだ」(黛氏)