情報通信総合研究所(ICR)は8月20日、「InfoCom ICT経済報告」を発表した。それによれば、2009年第2四半期(4-6月)の情報通信(ICT)産業は、輸出減少の底打ちから在庫調整の急速な進展により生産が持ち直し、6月には生産の減少幅が在庫の減少幅を下回って回復局面に入ったという。なお、同社は同報告書を四半期ごとに発表している。

情報通信産業の生産は、中国国内の内需刺激策を受けてデジタル家電需要が増加し、電子部品関連の輸出が回復したのに加え、国内の追加経済対策による液晶テレビ需要の増加により、持ち直したという。民需における設備投資は依然低迷しているものの、生産や輸出の底打ちが設備投資の増加にまで波及するかが、今後の注目点だとしている。

関連在庫の調整はITバブル崩壊後の10カ月に比べて長引くとの予想だったが、急速に進展したという。

情報通信産業の関連生産・在庫・設備投資(民需)・輸出の対前年同期比推移

2009年6月に入り鉱工業生産全体の減少幅は在庫の減少幅を上回って依然在庫調整局面にあるが、情報通信産業を見ると、生産の減少幅(-21.6%)は在庫の減少幅(-22.4%)を下回り、回復局面に入った。

生産と輸出は、2008年第4四半期(10-12月)以降は大幅に減少したものの、足元では4か月連続で生産の減少幅が縮小しているという。

関連サービスは2009年第1四半期(1-3月)に生産よりも遅れて減少幅が拡大したが、第2四半期に入り、ソフトウェア系(受注ソフトウェア、ソフトウェアプロダクト)の減少幅縮小により底打ち感がある。企業収益の低下の影響で設備投資全般の低迷が低迷し、ソフトウェアの新規受注は投資抑制の傾向にある中で、セキュリティ対策や運用・保守関連投資は堅調という。

一方、設備投資の先行指標となる機械受注は減少が続いている。関連消費は移動電話通信料とインターネット接続料を中心に、増加を維持している。

情報通信産業は海外経済の持ち直しにより、輸出の改善および生産の在庫調整の進展が続くとみられるという。この動きが本格回復のキーとなる設備投資の下げ止まりから増加につながるのかがカギになると、ICRは分析する。