宇宙航空研究開発機構(JAXA)および理化学研究所(理研)は、2009年8月15日に国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」の船外実験プラットフォームに設置された全天X線監視装置(MAXI:Monitor of All-sky X-ray Image)によるファーストライト画像(最初の画像)の取得に成功したことを明らかにした。
MAXIは、7月16日にスペースシャトル「エンデバー」号により打ち上げられ、同24日午前0時24分に若田飛行士らによるロボットアーム操作で「きぼう」船外実験プラットフォームに取り付けられ、8月3日より順次機器の立ち上げを行ってきており、今後、X線天体の観測データの蓄積を行うとともに、X線天体の位置やエネルギー強度を正確に決定するための較正処理作業を行い、2009年11月末からの定常運用に向けた準備が進められている。9月末には長期間蓄積された観測データによる較正済みの最初の全天X線画像が公開される予定。
MAXIは「きぼう」船外実験プラットフォームの初期利用テーマとして理研から提案され、採択されたミッション。MAXIの開発はJAXAや理研のほか、大阪大学、東京工業大学、青山学院大学、日本大学、および京都大学などの協力で進められてきた。
MAXIは、電力供給や姿勢制御、通信などの基本機能をISSに依存することができるため、従来より大型の検出器を搭載することが可能。その結果、天体が放出するX線をこれまでの全天監視型の観測装置に比べ10倍程度高い感度で検出することが可能となった。そのため、超新星やブラックホールと関わりの深いX線新星、γ線バーストなどの変動現象に対し、光や電波などとの多波長による同時観測を促進することが可能となる。
また、変動する全天X線源のカタログを作成することで、これまでに知られていなかった暗いブラックホールや中性子星などを検出するとともに、活動銀河といった宇宙の姿を明らかにすることを目標としており、少なくとも今後2年にわたり「全天を見渡すX線の眼」として活躍することが国際的に期待されている。
MAXIの成果をもとに、X線天文衛星「すざく」や、日本も参加しているスイフトγ線バースト衛星とフェルミγ線天文衛星、2013年打ち上げ予定のX線天文衛星「ASTRO-H」などの詳細観測型のX線γ線天文台に緊急観測を要請するなど、協力した研究の進展が見込まれている。
今回撮影に成功した画像は、MAXI搭載のX線カメラのうちガススリットカメラ(GSC)を用いて2009年8月15日15時~同16時30分までの90分間(ISS軌道1週分に相当)に撮影された。露出時間や位置ずれの補正などの処理が行われる前のものだが、主要なX線天体を観測するのに成功しており、カメラが正常稼働していることが確認された。
同画像では、2keVから10keVにわたるX線のエネルギー範囲において、1周回でおよそ20~30mCrab(1ミリクラブ:かに星雲のX線強度の1/1000)の天体まで観測することに成功しており、予定の感度が達成できていることが確認できた。
JAXAらでは、今後、今回のような観測を繰り返すことで、全天で1000個を越すX線天体の1日から数カ月にわたるX線の強度変化を90分に1回の間隔で監視し、X線による全天の動画撮影を目指すとしている。また、こうした同時間の尺度でクエーサーなどの銀河系外の活動天体を、高感度で系統的にモニタするのは初の試みとしており、今後は観測を重ねることで、これまでの全天型のX線観測装置の10倍を超す感度に到達できる見込みとしている。