米国ではiPhoneのビジネスユースが急激に広まっている。金融機関においても同様だ

モバイルバンキングにiPhoneを活用する事例が増えている。たとえば米国最大手銀行の1つ米Bank of Americaによれば、同社は300万人以上のモバイルバンキングユーザーがおり、しかもそのうちの43%がiPhoneまたはiPod touchのアプリ経由でのアクセスだという。通常、残高確認や送金(Transfer)が主な用途のモバイルバンキングだが、米銀行の1つUSAAではさらにアプリを改良し、小切手(Check)の預け入れ(Deposit)がiPhoneさえあれば2分程度で完了するソリューションを提供している。

USAA(United Services Automobile Association)は軍関係者やその家族向けの銀行業務や保険を提供する金融サービス会社だ。2000年ごろからインターネットバンキング業務を開始し、iPhone用のアプリ「USAA」の配布も2009年5月から行っている。他の多くの金融サービス会社のアプリや携帯電話向けのモバイルバンキングサイトがそうであるように、USAAのアプリも当初は残高照会(Account Balance)や支払い(Pay Bills)、送金(Transfer Funds)といったサービスが中心だった。だが7月末のアップデートでバージョン2.0.0になったUSAAアプリには「Deposit@Mobile」というメニューが新たに追加され、iPhone上で小切手の預け入れが直接行えるようになった。

日本とは異なり、米国では小切手による送金や出入金がまだ広く行われている。給料や料金の支払い、商品購入のキャッシュバック(Mail-in Rebate)だけでなく、ちょっとした金額の受け渡しでも小切手が登場する。多いときには月に十数枚以上の小切手を銀行に持ち込んで換金しなければいけない。最近では直営の銀行ATMで直接預け入れできるようにはなってきたが、少なくともATMのある場所までは出向かないといけないし、小切手が受理されるまで数日はかかり、煩わしい作業には変わりない。USAAではこれまでにも、自宅のPCで小切手の両面をスキャナで取り込んでインターネット経由で送信することで、オンラインでの小切手預け入れが可能なサービスを提供しているが、これをiPhoneのカメラ機能を使って2分弱の作業ですべて済ませてしまうのが「Deposit@Mobile」だ。詳細はUSAAがYouTubeで公開している「USAA Deposit@Mobile」というビデオを見てもらうのが一番早い。

受付時間制限や送金先制限など、とかく制限の多さが目立つ日本のオンラインバンキングだが、米国でのオンラインサービスは比較的メニューが充実しており使いやすいケースが多い。iPhoneアプリへの積極的な取り組みもそうした傾向を現しているとみられ、USAAのサービスはその中でもかなり先進的な事例の1つだろう。