若田宇宙飛行士を帰還させたスペースシャトル「エンデバー」も2010年には引退となる。今後、米国の民間宇宙開発にNASAがどう絡むのか、要注目だ

米国立航空宇宙局(NASA)は8月10日(現地時間)、商用の宇宙旅行サービスを提供する民間企業支援のために、連邦政府の経済刺激策用の予算5,000万ドルを利用する計画だと発表した。複数のメディアが同日に報道している。「Commercial Crew Development Program」と呼ばれる同計画は、9月末までにも正式に発表される見込みだ。

これは7月中旬に米議会を通過したNASA向けの予算10億ドルの一部を利用したもの。このうちの約半分は有人宇宙探査などに使用され、それとは別の予算の一部を今回のような民間での商用宇宙サービス新興に割り当てた形となる。同ファンド利用を検討している企業は正式発表から45日以内の申請猶予を与えられ、審査の結果いくつかの企業に対して資金の割り当てが行われることになる。現在NASAは人員や物資の輸送にスペースシャトルを活用しているが、2010年の退役までにあと7回程度のミッションを残すのみとなっている。こうした輸送業務の役割を今後担うことになる民間企業の早期育成の必要性が背後にあるとみられる。

だが一方で、今回の予算は商用宇宙サービス育成にはまだまだ不足しているという意見もある。英Reutersによれば、"SpaceX"こと米Space Exploration Technologies創業者兼CEOのElon Musk氏は「5,000万ドルという金額はいささか失望的だ。この資金ではロシアのソユーズ(Soyuz)の一席分のコストにしかならない」とコメントしている。NASAでは、このSpaceXのほか、Orbital Sciences Corpという2つの民間企業に5億ドルを投資している。その目的は国際宇宙ステーション(ISS)と地上とを往復するロケットやカプセルを開発するためだ。SpaceXではNASAとの契約の中で同社の"Dragon"と呼ばれる人員輸送用のカーゴシップの拡張を計画しているが、それには3億ドル相当の資金が必要になるという。

資金不足という話こそあるものの、その方向性自体はMusk氏も歓迎しているようだ。「政府が認識すべき最も重要なことは、2010年以降の宇宙輸送はロシアに依存しなければならない状態にわれわれがあるという点だ」(Musk氏)