今回は中国関連のニュースがランキングを賑わせた。昨年の北京五輪ではプレスセンターから自由なネット閲覧ができないことが報じられ、今年1月には「Google」や「百度」がアダルトコンテンツを含むという理由で取り締まりの対象とされるなど、インターネットの自由な利用を制限する動きはこれまでにも度々報じられている。今回はそれが個人の購入するPCにまで及んだことで、海外のからも反発を招いたようだ。

2009年6月のネット事件簿 Top10(※)

順位 記事 掲載日
1位 中国がPCメーカーに導入義務づけのフィルタリングソフトに盗用疑惑 6/15
2位 MSの新検索サービス「Bing」、中国内でアクセス禁止に 6/3
3位 Wikipediaがサイエントロジーからのアクセス遮断 - 恣意的編集で初アク禁 6/2
4位 出会い系サイト「ぽっちゃりパフェ」無届け営業、43歳男を逮捕 - 警視庁 6/2
5位 2ちゃんねるでバスジャック予告、15歳高校生を逮捕 - 警視庁 6/16
6位 Twitter、著名人の成りすまし問題で「Verified Account」を導入へ 6/9
7位 皆藤愛子さんのカレンダーを自作販売、著作権法違反で女逮捕 - 警視庁 6/4
8位 中国政府、国内販売の全PCにフィルタリングソフト導入を義務づけか 6/9
9位 今度は「ワンタッチBBS」に警告、楽曲違法配信の少年送検を受け - 福岡県警 6/2
10位 ダイエーのネット通販「d'club」、会員9万人のアドレスが一時公開状態に 6/5
※ 各記事の掲載日(6/1~6/30)から1週間のアクセス数をもとにしています。

人民総フィルタリング計画、1週間で頓挫

本当に"お騒がせ"だった、中国政府のフィルタリングソフトウェア導入問題。中国工業情報化省による、中国国内で販売される全てのPCにフィルタリングソフトのプリインストールを義務づける、という発表が事の発端だ(8位にランクイン)。6月9日発表で7月1日より実施予定いうから、何とも慌ただしい。これには中国国外で製造された製品も含まれるため、海外にも大きな波紋を広げた。

当然、中国国内ネットユーザーからの反発も大きかったようだ。中国情報専門ポータル「サーチナ」では中国の大手サイトで行われたユーザーアンケートの結果を報じている。フィルタリングソフトはPC購入後にアンインストールすることも可能で"強制ではない"と発表されていたものの、インストールするか否かという設問に対する回答は「インストールしない」が約9割と圧倒的多数を占める結果となった。

その後、このソフトウェアは、バッファオーバーフローの脆弱性や、既存のフィルタリングソフト製品からのプログラムやコンポーネントの流用を指摘されるなど、様々な問題点の存在が報じられることになる。この顛末が今回のトップを飾ったわけだが、とかく強気な相手を報じるよりもそれを転ばすニュースの方がひと目を引きやすいというべきか。

結局、16日には中国政府がフィルタリングソフトの導入を選択制にすると発表。ここまで約1週間だ。いっそ潔いというか、切るのは早いというか……さすがやることがダイナミック。日本の政治がやっている"ブレた・ブレない"発言の応報なんてかわいいモノだと思えてくる。ちなみに、このソフトは現在も開発元のサイトからダウンロードが可能だ。

最終的に29日になって、この計画案を延期する方針が発表された。意外にあっさりと「事実上無期限見送りの措置がとられた」形となったわけだが、その詳細な理由は明らかにされていないという。 今回はさらにマイクロソフトの検索サービス「Bing」が中国内でアクセス禁止になっているというニュースが2位にランクイン。果たしてネット上に万里の長城は築けるものだろうか。

急募、能力の正しい使い道を探し出す能力

7位にランクインしたのは、著作権違反の品物をオークションで販売し、無職の女が逮捕されたという事件。前回のランキングで大量ランクインした海賊版DVD販売の事件と同じく、罪状は「著作権法違反」となっているが、今回は少し様子が違う。

逮捕された女が販売していたのは、タレントの写真を使ったCDケース型の卓上カレンダー。ネット上の画像掲示板からダウンロードした写真を利用してカレンダーに仕立て、それをプリントしてケースに入れ、"商品"としていた。ただコピーするだけでなく、自らの作業によってカレンダーという付加価値をつけて販売することで、利益を得ていたわけだ。

カレンダーを作る作業は、実は意外と大変なんじゃないだろうか。まず、同じフォーマットにきれいにレイアウトできる構図の写真を最大12枚用意しなくてはならない。そして、1年365日の日付・曜日を間違わずに入力し、さらに最低限カレンダーとして機能を損なわない範囲で読みやすく、かつ写真を殺さないよう配置しなくてはならない。書体や文字サイズも仕上がりイメージを大きく左右する。

……と思ったら、プリンタの付属ソフトや年賀状作成ソフト、アルバムソフトなどにけっこうカレンダー作成機能が搭載されているのだ。これなら簡単? いや、話はここからだ。

女は「約2年半の間に、約700万円を売り上げていた」という。逮捕容疑となったカレンダーは「3回にわたり計3,900円で販売」したというから、平均落札価格を1,300円と考えると、累計販売数は約5,384点。約2年半を900日とすると、1日当たり5.98。ほぼ毎日5~6点のカレンダーを製造していたことになる。

毎日文句も言わず、プリントして、カットして、ケースに収め、発送する。必要な資材を常に仕入れ、新しい素材(写真)の探索も怠らない……。もしこれがまともな仕事であれば、マメで丁寧な働きぶりが評価されるような人だったのかもしれない。間違った方向に能力を使うと犯罪になるということを、これからの義務教育は早い段階で正しく伝えていかなくてはならないのだろう。