「ドメイン名窃盗容疑」という米国でも初とみられる逮捕例が話題になっている。しかも興味深いのは、その盗んだドメイン名を犯人はネットオークションのeBayを使って11万1,000ドルという大金で売却したのだが、その売却先が強豪として知られる米NBAのLos Angeles Clipperの選手だったという点だ。この渦中にある「p2p.com」という非常に貴重な名前のドメインをめぐる事件の経緯を振り返ってみよう――。
米Los Angeles Timesの8月3日(現地時間)付けの報道などによれば、米ニュージャージー州ユニオン在住のDaniel Gonclaveという25歳の人物は3年前にドメイン管理会社の米GoDaddy.comのシステムをハッキングし、p2p.com の所有権の自身への移転に成功している。その後eBayでの売却を試みて、最終的にこのドメインはNBAプレイヤーであるLos Angeles Clipperの"Mad Dog"ことMark Madsenへ11万1,000ドルという大金で転売された。同件はP2Pドメインの元の所有者だった人物が GoDaddy.com からドメインが盗まれたとの通報を受け、2008年10月からニュージャージー州警察のサイバー犯罪部門が捜査を開始しており、今年7月30日になって逮捕に至った。ドメインを購入したMadsenは、当然ながら当該のドメインが盗難品だったことを知らなかったようだ。
だがひとつ興味深いのは、なぜNBA選手がドメイン名、しかも「p2p.com」などという非常にレアな高額ドメインの購入などを行ったのかという点だ。前述のLA Timesによれば、MadsenはNBAプレイヤーであると同時に、なんと著名なドメイン投資家でもあったというのだ。p2p.comという高額ドメインだけでなく、中小さまざまなドメインを買い付け、次々と高値での売却を繰り返していたという。例えば1年前には何十個ものカナダのドメインの売却を行った記録が残っていると同紙では説明している。また同氏は自身のTwitterアカウントやBlogをこまめに更新していることでも知られており、かなりITの知識に精通しているようだ。だが一方でこうしたTwitterやBlogにはNBA以外の話題があまり出てこないため、普通のファンであればドメイン投資家という同氏の別の顔を知ることはほとんどないだろう。