日本オラクルは8月5日、同社の統合運用管理ツール「Oracle Enterprise Manager」の新コンポーネント「Oracle Real User Enterprise Insight(以下、Oracle RUEI)」の製品説明会をメディア向けに行った。同製品はWebアプリケーションの性能監視を行うツールで、すでに6月から日本市場でも提供が開始されている。CPUの死活監視やHTTPのレスポンス監視だけでなく、Webアプリケーションのエラーメッセージやエンドツーエンドの応答時間などを監視、ユーザ視点のモニタリングを重要視しており、これまで国内市場ではあまり見なかったタイプの製品といえそうだ。
日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部の三澤智光氏は「オラクルでは、クラウドコンピューティングを支える技術は次世代データセンター(NGDC)にあると認識している」とした上で、「大規模化、集中化が進むクラウドにあって、それを支えるためにはいくつかの要素が必要だ。モニタリング(監視)はその中のひとつ。統合運用管理の可視化、予防的統制という役割を果たす」とし、監視ツールの重要性を強調する。
Oracle RUEIは通常の運用監視ツールとは異なり、従来型のシステム監視(CPU/ネットワークの死活など)だけではなく、「いつも使っているインターネットアプリケーションが、エンドユーザにどう見えているか、感じられているか、というユーザ視点に立ったサービスそのものの監視」(三澤氏)を行えることが特徴。たとえばオンラインショップを利用しているユーザが、「在庫はありません」や「データが見つかりません」などのエラーメッセージばかり受け取っているようでは、たとえネットワークが生きていても、販売機会を損失することは免れない。運用監視ツールだけでこれらをモニタリングすることは不可能で、クラウドによるビジネスが世に浸透すればするほど、性能監視の重要性が高まるというわけだ。
性能監視ツールには、ネットワークトラフィックをスニフし、サーバがつねにパケットを受けている状態にしておく「パッシブモニタリング」と、ビーコン(エージェント)を配布し、ユーザ操作を擬似実行する「アクティブモニタリング」の2つがある。Oracle RUEIはパッシブモニタリングタイプのツールで、監視対象のWebアプリケーションを操作するすべてのユーザの性能、応答時間、処理速度、可用性を監視、ビジネストランザクションを分析する。これにより、「エンドユーザの体験を洞察することで顧客満足度の向上計画を図ったり、アプリケーション性能に起因する機会損失を低減することが可能になる」(日本オラクル システム事業統括本部 データベース製品ビジネス推進本部 データベース製品戦略推進部 シニアマネージャ 大槻剛士氏)という。また、Oracle Enterprise Managerのコンポーネントであるため、他のコンポーネントとの連携により「テスト環境から本番まで、サービスの品質を総合的に向上させることが可能」(大槻氏)としている。BIツールと連携させ、さまざまな分析/予測を行うことも可能だ。
主なターゲット層は、金融、小売、公共、ハイテク(eコマース)など。欧米ではすでにING(金融)、TOMTOM(eコマース)、KLM(運輸)などの大企業での導入実績が数多くあるが、国内ではこれから市場開拓を行うことになる。「日本市場にとって新しい切り口のソフトウェアであるため、正直、我々にとっても未知数な部分は大きい。しかし、ユーザ視点に立った性能監視はこれから必ず必要とされる技術」と三澤氏。性能監視ソリューションを一括提供することで、市場そのものの拡大も狙いたい構えだ。
Oracle RUEIのデモ画面。フィルタリング機能により、任意の日時におけるエラーメッセージを絞り込むことが可能。エラーも種類ごとに色別でわかりやすく表示される。また、任意のエラーが出たときにリアルタイムでアラートを出し、ユーザの状況を即座に把握することも可能 |
価格は1プロセッサあたり940万2,200円から(最小2プロセッサ)。また、E-Business Suite、Siebel、PeopleSoftといったOracle ERPに対応したアクセラレータもそれぞれ提供される。