8月3日都内で、毎日新聞社の主催による「ソーラータウンフォーラム~太陽光社会をめざして」が開催された。同フォーラムでは、太陽光発電をテーマに、講演とパネルディスカッションが行われた。会場はテーマに即して温度は28℃に保たれ、会場で私用される電力はすべてグリーン電力によるものと、エコが実践されていた。
太陽光発電が求められる理由
経済産業省 資源エネルギー庁長官 石田徹氏 |
経済産業省資源エネルギー庁長官を務める石田徹氏は「太陽光社会をめざして」というテーマの下、講演を行った。同氏は初めに、現在、太陽光発電が必要とされている理由として、他の発電に対する太陽光のアドバンテージを説明した。1点目は、太陽光発電のCO2排出量が少ない点である。同氏によると、「他の発電方法に対し、設置して2年で設備・運用によって排出されたCO2は取り戻せる」という。
2点目は、エネルギー源を輸入に依存しない点だ。日本はエネルギー輸入国であり、発電に必要な石油・石炭・ガスなどの化石燃料を大量に輸入しているが、太陽光発電はこうしたエネルギーを必要としない。
3点目としては、製造・販売・施工など、産業として構造が広いことが挙げられた。今年から、国の補助金制度、税制による優遇なども始まっているという。同氏はここ1、2年で、太陽光発電関連の新規雇用が1万人拡大するのではないかと説明した。
そのほか、住宅の空きスペースに設置できるのもメリットだという。同氏曰く、「国民全員参加型」の発電というわけだ。太陽光を使うのだから、北海道や東北など、日照時間が少ないところは、発電量が少ないのではないかと思ってしまうが、実のところ違うそうだ。「現在、秋田よりも北にある稚内でも実験をやっており、太陽光発電に日照時間はあまり関係ない。都心に比べて、地方のほうが住宅の屋根が広かったり、日当たりがよかったりする場合もある」(石田氏)
課題解決に向けて国が全面的にサポート
同氏は次に、太陽光発電の課題とその対応策について説明を行った。まずは、「出力が不安定であること」が挙げられた。太陽光発電の出力の不安定性は家庭の電圧などの電力系統に影響を及ぼし、それを防ぐために、系統側や一般家庭に蓄電器を置いたり、状況に応じて出力を制御したりする必要がある。現在、こうした出力を安定させるための技術の開発が世界で進められているという。
2つ目の課題は「発電コストが高い」ことだ。太陽光発電による1キロワット時の発電量のコストが49円であるのに対し、風力発電は9~14円、火力は7円、原子力は6円である。太陽光発電の普及にとってコストの引き下げが火急の課題というわけだ。
同氏によると、コストの引き下げは技術と国による支援策から進められているそうだ。例えば、太陽光発電に必要なシリコンにおいては、コストが安い「薄膜シリコン」の開発やシリコンに代わる「CIS」という化合物の開発が進められている。また、製造プロセスを簡略することでコストを抑えるといったことも行われているという。「国としては、2025年に1キロワット時の太陽光発電のコストを世界標準値の7円にすることを目指している」
一方、国の補助金制度では、住宅に対し、システム価格が1キロワット70万円以下で品質保証などの要件を満たすシステムに対し、1キロワット当たり7万円を補助する。税制としては、「新築ローン減税」と「省エネ改修減税」が適用される。また、非住宅の場合、自治体などは導入費用の2分の1、民間事業者などは導入費用の3分の1が補助される。税制では、中小企業などは7%の税額控除、固定資産税の特例が適用される。
そのほか、11月からは、太陽光発電導入拡大のためのアクションプランがスタートし、コンビニエンスストア・学校・道路・ガソリンスタンドなどにおける装置の設置が進められるそうだ。
昨年の世界の太陽電池の生産量において、日本は中国に抜かれて2位だった。今後巻き返しが期待されるところだが、それでも日本は太陽電池分野における技術先進国と言えよう。そして、エネルギー輸入大国である日本にとって、太陽光発電は重要な技術であり産業である。石田氏の言ではないが、他の発電方法と違って、太陽光発電には私たちも参加することが可能である。明日の日本、地球を守るためにも、太陽光発電に関わっていくという姿勢を持ちたいものである。