宇宙技術の産業化を狙う
NECと米Aerojet-Generalが、人工衛星向けイオンエンジンの開発・販売における協業に向けた検討を開始したことはすでに既報のとおりだが、これに併せてNECでは記者会見を開催し、同協業の狙いなどの説明を行ったので、それをレポートする。
この発表の少し前、7月31日に国際宇宙ステーション(ISS)から若田宇宙飛行士が地球に帰還したが、NECの航空宇宙・防衛事業本部の副事業本部長である近藤邦夫氏は、「今回の作業でISSの日本実験棟である"きぼう"が完成した。きぼうには、NECが関与した部分が多くある」と指摘する。
具体的にNECが"きぼう"に関与した部分は、
- ロボットアーム
- 宇宙環境計測ミッション装置
- 全天X線監視装置
- 船内実験室の「管制制御装置」
- 衛星間通信システム
- 地上での運用管制システム
と実に幅広い。
こうしたさまざまな分野に技術を提供できることを武器とするが、近藤氏は「今後はこうした人工衛星を使って、地上にどういった情報をもたらすかといったシステムやサービスの面までカバーした、トータルソリューションの提供を目指したい」とする。すでにこうした取り組みは、科学衛星関連では月に帰っていった「かぐや」や、小惑星探査機「はやぶさ」で活用されているが、科学分野のみならず、実用衛星の分野でも7月22日の皆既日食を硫黄島から中継するのに高速インターネット衛星「きずな」が用いられていたりと、各方面に対するノウハウの蓄積が進んでいる。
今回のAerojetとの提携は、「"産業化"を目指した積極的な海外展開の一環」(近藤氏)とするほか、従来の宇宙機器の開発製造に加えて、「宇宙ソリューションビジネス」を展開していきたいという同社の思惑が存在する。特に産業化としては、「プロダクトを各コンポーネントから"システムプライム""ソリューションシステム"へと拡大することと、マーケットを海外に広げていくことが重要であり、我々はそれをフレキシブルな技術開発力を活力とし、顧客の要求に合わせた製品を適宜提供していくことで対応する」(同)とする。