日本ヒューレット・パッカードとレッドハットは7月30日、金融機関向けにLinuxベースのプラットフォーム移行を支援するプログラム「ReaLISM(Realtime Linux Infrastructure for Server Migration)」の提供を開始した。膨大な処理データ量を超高速で処理することを求められる金融機関のシステム基盤構築を低コストで実現することを目標としたのもので、Red Hat Enterprise Linux 5ベースのリアルタイムLinux OSをHPのブレードサーバHP ProLiant G6に搭載したシステムでサービス提供を行う。
今回の発表の目玉は、リアルタイムの処理能力を追求したLinux OS「Red Hat Enterprise MRG Realtime」を採用していること。すでに今年2月からレッドハットより提供されており、RHEL 5と完全なアプリケーション互換を実現している。「MRG Realtimeは、RHEL 5をインストール後、カーネルだけを置き換えたもの。(アプリケーションの実行環境である)glibcは同じなので、プログラムのリコンパイルは必要ない」と説明するのはレッドハット マーケティング本部 部長 兼 プロダクト・マーケティング・マネージャの中井雅也氏。MRG Realtimeについて「MRGは、Message、Realtime、Gridのそれぞれの頭文字を表している。その中でもリアルタイム処理に重きを置いたMRG Realtimeは、徹底的にローレイテンシにこだわった。ストレージI/O処理よりもネットワーク処理を高い優先度で実行し、リアルタイムアプリケーションの処理中に割り込みが発生しないようにスケジューリングできる。マイクロ秒レベルの正確さを提供でき、処理時間、スループットにおいてもぶれが少ない」と語る。
ここまでリアルタイム処理にこだわった理由は、金融機関が「これまでにないレベルのローレイテンシを求めている」(日本HP ISSビジネス本部 ソフトウェア・プロダクト&HPCマーケティング部 担当部長 赤井誠氏)ことが挙げられる。2010年、東京証券取引所(東証)の新システム稼働をにらみ、各金融機関もまたシステム更改に迫られており、その中でも高速性は最も必要とされる部分。「いま、金融機関系システムでいちばん求められている要素がリアルタイム処理性能」と赤井氏は強調する。国内でも確実に高まる需要に向けて、低コストで最新鋭のブレードサーバHP ProLiant G6と、すでにニューヨーク証券取引所(NYSE)で稼働している実績をもつMRG Realtimeの組み合わせでもって、競合他社の一歩先を行きたいというのが両者の狙いだ。
ReaLISMの提供開始に伴い、日本HPは市ヶ谷本社内の「HP金融グリッドセンター」内に「金融機関向けLinuxリアルタイムシステム構築支援オフィス」を設立、総合的なサービスの窓口としてリアルタイムシステムの設計、アプリケーションのポーティング支援およびチューニング支援、リアルタイムシステムのデリバリを行う。また、レッドハットは、MRG Realtimeおよびその技術支援を行い、構築支援オフィスに同社のスタッフを常駐させる。「両社のエキスパートによる設計/チューニングで、パフォーマンスを最大限向上させ、リアルタイムOSにおけるばらつきを極力なくし、顧客の要求に応えていきたい」(赤井氏)としている。