サイベースは7月16日、BI製品「Sybase IQ 15.1」日本語版の発表にともない、ユーザー/パートナー向けの説明会「Sybase IQ 新バージョン発表会」を開催。説明会では、Sybase IQの導入事例として、横浜銀行の店別経営情報システム、HMVジャパンのマーケティングオートメーションシステムが紹介された。
横浜銀行の店別経営情報システム
NTTデータフォース 三行共同システム開発本部 部門システム開発統括部 部長 石野勉氏 |
横浜銀行の店別経営情報システムを紹介したのは、NTTデータフォースで三行共同システム開発本部 部門システム開発統括部 部長を務める石野勉氏。NTTデータフォースは、金融機関の情報システムの開発、保守、運用を行うことを目的に2000年に設立された企業で、横浜銀行のシステム・アウトソーシング受託が中心業務となっている。
石野氏によると、横浜銀行の店別経営情報システムは、営業店と国内営業部門のマネジメントを支援するため、預金、融資、外為、損益などの経営情報を必要なときに、ユーザー各自が取り出すことができるシステム。同システムは1993年に第1次システム、2002年に第2次システムとして構築されてきており、2008年のWebベースのシステムへの更改時にSabase IQを採用したという。
システム更改にあたって課題となったのは、ホストやVBのプログラムで構成されていた旧システムの資産(計表)をどうするか。計表プログラムは、ホストオンラインプログラムが約300本、端末プログラム(VB)が20本、Excelマクロが40本、データベースが100個存在していた。同システムでは、エリア別の集計を出す必要があったが、システムの性能を出すために、いったんデータベース上に集計値を格納する構成をとっていたという。
「Webシステムへの移行にともなって、集計値を持たなくても性能が出せる高速DBエンジンが必要だった。また、エンドユーザーコンピューティングの視点から、計表作成が容易かつ短期間で可能なBIツールが必要だった」(石野氏)
そんななかで、検討したのが、Sybase IQをエンジンとしたMS DataStadio Suite。採用に至った理由としては、ODBC2.5に対応し、Windowsアプリケーションとの相性が良く、効率的な試験が可能だった点、操作ツールであるSybaseCentralの操作性が良く、設定作業が容易であった点、Sybase IQが高速データベースを組み込んだBIツールであったため、性能面を意識したDB設計が不要だった点、他社と比較して安価だった点などを挙げた。
実際、導入のメリットとしても、エリア合計をテーブル上に作成する処理が不要になったほか、店舗属性の変更のつど、エリア合計を再集計するといった作業が不要になった。また、検索スピードの高速化、ロード処理の高速化が実現できた。石野氏は、「従来、パラレルロード処理で30分かかっていたものが、シングルロード処理で5分で終了できるようになった。また、データの圧縮効率が高いため、DB領域が当初想定の3割で済んだことは驚きだった」(同氏)とする。現在は、横浜銀行の次期勘定系への移行にあわせて、GUIで計表を作成する機能を開発中という。
HMVジャパンのマーケティングオートメーションシステム
一方、HMVジャパンの事例は、HMVジャパンのIT本部で情報システム開発課長を務める市川秀樹氏が紹介した。
同社では、2007年10月からDWHの稼働を開始し、販売、受注、在庫、出荷といった各データベースからデータを抽出、分析することで、顧客属性の分析やキャンペーン企画といったマーケティング活動に役立ててきた。
HMVジャパン IT本部 情報システム開発課長 市川秀樹氏 |
各データはETLツールを使って、DWHであるSQL Serverに格納。そのデータをSQL ServerのOLAPツールで利用すると同時に、明細データをSybase IQ上でも分析している。現在までにDWH/BIで定義されたキューブは10種類以上、メジャーは20種類以上、ディメンションは100種類以上にわたっているという。
近年では、ECサイト「HMV ONLINE」で、顧客1人1人の属性に合わせたワン・トゥ・ワン・マーケティングを実践しており、キャンペーンの企画から、キャンペーン設計、メールテンプレート作成、メール配信、レポート作成などのPDCAサイクルをまわす「マーケティングオートメーションシステム」を構築している。Sybase IQはその根幹を成す「マーケティングDB」として、活用されている。
「マーケティングDBは、マーケティング理論を具体化したデータマートの集合という位置づけ。例えば、顧客の行動イベントのサマリーや、RFM(Recency、Frequency、Monetary)分析の値などをSybase IQにどんどん放り込んでいく。それを、前月からいくつ上がった人、下がった人などとスコア化し、顧客1人1人に適したメール配信やキャンペーン展開につなげる」(市川氏)
同氏によると、こうした活動を支えるデータベースに求められるのは、1. 高速なクエリ(特に集計処理)、2. 低いメンテナンスコスト、3. 少ないディスクスペース、4. マルチプレックス機能でスケールアウトが可能、という4つの要素。この4つがSybase IQを選択した理由にもなっているとする。
HMVジャパンでは、基本的にシステムを内製していることもあり、メンテナンスコストが低いことやパフォーマンス・チューニングの必要がないSybase IQは大きなメリットだという。現在は、新バージョンで追加された機能にも期待を寄せている。
「現状は、シンプレックス構成で、分析用途とバッチ用が混在している。今後は、ビジネスの拡張に合わせて、マーケティングDBを拡張する予定だ。例えば、マルチプレック構成をとることで分析とバッチを分離したり、高可用性構成をとることで、分析環境を外部に公開したりといったこと想定している」(同氏)