NECエレクトロニクスは7月29日、2010年3月期第1四半期(4-6月)決算の概要を発表した。これによると売上高は前年同期比38.7%減の1,019億6,000万円、営業損益は前年同期の17億100万円の利益から209億3,500万円の損失に、税引き前純損益は同2億7,900万円の利益から207億7,400万円の損失にそれぞれ転落した。

NECエレクトロニクスの2010年3月期第1四半期の業績

NECエレクトロニクスの代表取締役社長である山口純史氏

ただし、同社代表取締役社長である山口純史氏は、「営業損益は期初の想定どおりだったものの、半導体売上高は期初の想定を若干上回る実績となる21%の増収を達成した」とする。同社の主軸である「SoCプラットフォーム」「MCUプラットフォーム」「個別半導体」の3プラットフォームともに増収を果たしたためで、「特にディスクリートを含む汎用製品やLCDドライバICの売上が中国政府の施策による農村への家電の普及などに後押しされて伸びたほか、自動車向け半導体が想定以上に好調だったことに起因する」(同)と説明する。

また、これに伴い工場の稼働率は前四半期43%から51%まで改善を果たしたとしており、バランスシートについても「現金および現金同等物は2009年3月末比で218億円減少したものの、現状の水準がボトムと考えており、第2四半期以降は改善していく」(同)との見方を示し、キャッシュフローについても「売上高が改善した第1四半期の営業キャッシュフローの回収の多くは第2四半期を予定しており、改善していく見込み」(同)とする。

2010年3月期第1四半期の半導体プラットフォーム別の売上高状況

2010年3月期通期の見通しについては、第2四半期も回復傾向にあるものの下期の見通しが依然として不透明であるため、期初予想を据え置くとし、「今年度の固定費削減施策を着実に実行することで、目標である年間での営業損益の黒字化を実現したい」(同)とした。

2010年3月期通期業績予想

地域別の状況は、というと、中国がかなり好調のようで、「家電のほかにも通信インフラ、電力関連などを含めて全体的に好調となっている」(同)と語るほどである。また、日本も「自動車が回復しつつあるほか、家電も(市場の伸びが)戻ってきている」(同)と回復傾向を窺わせた。ただし、欧米地域については「欧州は"闇"の状態だが、自動車で動きが見えてきていることが光明」(同)とするが、「米国については、見通しが立っていない状況」(同)としており、短期的にはアジアに注力していくことを明言した。

直近の第2四半期の状況はというと、受注状況は7月時点でマイコン、ディスクリートを中心に順調に推移しているが、「大きく改善した4月以降、単月ベースではほぼ横ばいの水準で推移している」(同)としているが、足元の受注が堅調であることから、予想では前四半期比9%増の売上を見込むが、「そこから5%程度の上積みの可能性がある」(同)とする。

2010年3月期第2四半期の売上見通し

主な牽引役としては、自動車向け半導体が回復しつつあること、ならびにデジタルテレビ向けにドライバICやディスクリートが好調なほか、デジタルAV向けに「EMMA」が伸びており、「工場の稼働率も65%程度まで向上、場合によっては70%程度までいくことも有り得る」(同)とした。

牽引役として取り上げられたEMMAは、世界15カ国、80社に対し累計出荷1億個を達成、Blu-Ray関連機器を中心にビジネスを拡大しているほか、地上デジタル放送向け「簡易チューナ」への採用やPMP(Portable Media Player)、PND(Portable Navigation Device)向けの採用も進んでいるという。

また、同社最先端プロセスとなる40nmプロセスでの商談も拡大しており、40nmプロセス製品は上期中に量産が開始される計画となっているという。

さらに、同社では好調な自動車市場に対し、電気自動車(EV)ならびにハイブリッドカー(HEV)向けにソリューションの強化を図るために、「エコソリューション」を立ち上げるとし、デバイスのみならず、システム(セット所品)、新エネルギー分野の活用による社会全体として活用できるものなどに向けた提案を行っていくとし、さらなる成長を狙うとしている。

山口社長の抱負を示す言葉(同氏は、今年一番の大きなチャレンジとして"収益の改善"を掲げているという)