7月20日(米国時間)、米Microsoftは2万行以上のソースコードをLinuxコミュニティに提供したと発表した。同社によれば、このコードには3つのLinux向けデバイスドライバが含まれており、これを利用することでWindows Server 2008 Hyper-VやWindows Server 2008 R2 Hyper-V上でLinuxを動作させる場合のパフォーマンスを飛躍的に向上させることができるという。

では、実際のところLinuxカーネルの開発を主導するLinus Torvalds氏は、この衝撃的な発表に対してどのような見解を持っているのだろうか。同氏はLinux Magagine誌の取材に答えて次のようなコメントを発表している。

「私は個人的にドライバのコードにはそれほど関心がないので、まだ(該当のコードを)見ていないし、自ら使うこともないでしょう。このようなケースに対してはメンテナを信頼しているので、もしメンテナが私にコードを提出するのであればそれを見ることになると思います」

また、このコードの提供を受け入れるべきかという質問に対しては次のように答えている。

「私は『政治の上の技術(原文: Technology Over Politics)』の信者です。私はコードに関する明らかな根拠があり、ライセンスなどの問題を気にかける必要がなければ、そのコードが誰から提供されたものなのかを気にかけることはありません」

Linus氏自身もしばしばMicrosoftに関するジョークを言うことがあるが、だからといって同社を憎んでいるわけではないと強調する。特定の個人や企業を拒絶することは「オープンな開発」ではなく、それはすでに「フリーソフトウェア」とは呼べないと同氏は考えているからだ。

それでもMicrosoftのこれまでの戦略などを考えて、同社のコードを受け入れることに不安を感じる人は多いだろう。少なくとも今回の決定も、Linuxの利益よりも同社の利益を考えてのものであることは間違いない。Linux Magazineでも同様の指摘をLinus氏にぶつけている。それに対して同氏は「オープンソースコードの提供に対する利己的な根拠を否定するのは愚かなことだ」と指摘する。たとえそのコードが開発者の利己的な利益に基づいて作られたものであったとしても、それが全体の利益になるのであれば、コミュニティとして拒絶する理由はないからだ。

Linus氏のこの姿勢は、相手がMicrosoftであろうとも、またそうでなくても一貫して変わることはない。これはLinuxのオープン性を保つために極めて重要なことだと言える。今回の件も含め、オープンソースと企業戦略の間で政治的な思惑がぶつかり合うことは否定できない。しかし最終的にはオープンソースの意義にかなうよう、すべての人にとって利益になる選択が行われることを期待したい。