富士通は7月30日の2009年の第1四半期決算発表前に、代表取締役社長 野副州旦氏が2009-2011年度の中期目標を説明する経営方針説明会を開催した。
冒頭、野副氏は1123億円の赤字となった2008年度を振り返り、「2008年は悪戦苦闘した1年であったが、2009-2010年がどういう年になるのかが、2008年で明らかになった。経済環境が悪かったとはいえ、(大きな赤字になり)持ちこたえられなかったということは、企業体質が弱いと言わざるを得ない。強い企業というのは、こういうことが起こっても持ちこたえられる企業だ。そういう意味でもっと構造改革を進めるのが2009年だ」と述べた。
富士通では現在「整理整頓」と表し、不採算事業の見直しやグローバル化のための企業買収を進めており、2008年度には、コンデンサ事業の譲渡、富士通オートメーションの株式譲渡、HDD事業の譲渡のほか、豪KAZ社や豪SCC社の買収などを行っている。野副社長はこの点について「2008年は経営的には逆風だったが、整理整頓する上では追い風であった。経済環境の悪化により、むしろスピートをもってやりやすかったというのが実感だ。また、(海外の企業を買収する点においても)円高効果が思わぬ追い風になった」と語った。
同社では2009年度は、売上高4兆8000億円、純利益200億円を目標に活動しており、7月30日には4-6月の第一四半期の決算発表が行われるが、目標の達成について野副社長は「容易なことではない」と厳しい見通しを語ったが、「2年連続の赤字は絶対に許されない」と、黒字化に向けて強い決意を表明した。
同社では、今後の経済状況について、2009年度を底に2010年度からゆるやかな回復を期待できるものの、力強い景気上昇は期待できない、IT投資についてもここ3年は仕込みの時期であると予想している。
ただ、2010年度には、サービス、ネットワーク、デバイスの分野で600億円の事業増益のほか、LSI事業やHDD事業の構造改革効果が顕著化、またのれん代の償却の影響などで600億円、合わせて1200億円の営業増益を達成し、2011年度には、サービス、プロダクト、海外ビジネス等の事業でさらに600億円の増益を見込み、2011年度には営業利益2500億円、純利益1300億円の過去最高益を達成したい考えだ。
野副氏は「2010年度に600億円の事業増益を生む構造改革はできている」と自信を見せた。
野副氏が目指す富士通の将来像は「真のグローバルIT企業」。同氏は「テクノロジーソリューションを足がかりに、3年間で日本に軸足を置く、グローバルIT企業としての存在を示したい」と語る。
グローバル化についは「Think Global、Act Local(グローバル起点)」を基本に活動する。提供するサービスについては、グローバルを見据えて製品化していくものの、実際の展開については、ある程度現地に任せていく。
野副氏は昨年は一度も海外に行っていないと語ったが、同氏はその理由を「グローバルで協業をやりたいといえば、かつては必ず日本から出ていった。しかし、富士通本体のグローバル化には、新しいグローバル化が存在しているのではないか。最近は協業の話し合いを日本でやろうという動きが増えており、グローバル化に対するものの見方に、日本をベースに動く新しい構造が生まれてきている」と述べ、グローバルでの協業を日本法人どうしで行う動きが広がっていることをうかがわせた。
国内については、真のお客様のパートナーとなるべく、「作りっぱなしにしない」モデルを構築し、下流である運用で人とITが業務内容を本当に改善できるのかを検証し、得られた情報を、上流工程である企画にフィードバックし、提案力強化を目指していく。また、富士通エフサスのインフラサービス事業、富士通FIPのデータセンター事業、富士通テンの自動車向けプロダクト事業など、グループ会社の専門性を強めていく。
また富士通では、今年の5月富士通ビジネスシステム(FJB)を完全子会社化し、中堅・中小市場の窓口をFJBに一本化する方針を示したが、野副氏はその理由を「中堅・中小企業に対して富士通はやるやるといいながらできていない。この市場では、パートナーさんや外部チャネルの方々をどうやって活用していくかがポイントだが、それをわかっていない富士通がやるのもおかしい」と述べた。
また、野副氏はこの市場について「経営状況が厳しい企業もあり、それほどパイは広がらないのではないか。しかし、市場内の変化は起こる」と述べ、今後この市場がSaaS/クラウドに向かうという見通しを示した。
そのほか、最大の懸念材料であったLSI事業については固定費を中心に費用削減施策を確実に実行し「2009年度の第3Q、遅くとも第4Qには四半期ベースで黒字化できる」と述べ、ある程度黒字化の目途がたっているとの認識を示した。