昭和電工は7月23日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)の高出力化を実現するカーボンセパレータのコストダウンが図れる技術の開発に成功したことを発表した。

開発されたバイポーラ型カーボンセパレータの外観(セパレータサイズはA4)

PEFCは、水素と酸素の化学反応を用いて発電する仕組みで、発電源であるセルを直列に重ねた構造を採用している。このセルとセルを仕切るセパレータは、表裏両面をそれぞれ流れる水素ガスと酸素ガスを完全に分離、遮断し、かつガスの流路を確保するほか、発生した電気を効率良く伝送する役割ももっている。こうしたセパレータには、ガスの遮断性能の向上と高伝導性、強い機械強度、耐腐食性、高生産性などが求められていた。

今回、昭和電工が開発したセパレータは、強い機械強度と高い導電性の確保のために、ホウ素(B)を添加したカーボンを原料とした2枚のセパレータ板を特殊な接着樹脂を用いることで、高精度で熱溶着させることで、水素ガスの通過面(アノード)と酸素ガスの通過面(カソード)および化学反応の結果として生じる発熱を抑制するための冷却水流路を一体化したバイポーラ型カーボンセパレータと呼ばれるもの。

2枚のセパレータ板を補助部品により接合する従来の同社セパレータに比べ、2枚のセパレータ板の間の冷却水流路をシールするためのパッキン工程が省略されるほか、セパレータ板同士の接触抵抗値を1/10以下に低減、2枚のセパレータ板の一体化による相互補強効果により厚みを0.1mm程度まで薄肉化などが可能となった。加えて、長期持続性のある親水化処理により、セパレータ表面における化学反応の結果として生じる水の排出性を高めてガス拡散を容易にすることが可能で、これらの効果を合わせることで、従来PEFC比で、出力密度を約30%向上させることが可能になったという。

従来のカーボンセパレータ(左)と新たに開発されたバイポーラ型カーボンセパレータ(右)の違い

また同社は、焼結カーボンと同等の導電性をもつ集電板の開発にも成功したことを明らかにしている。これは独自に開発した高い充填性を実現する高導電性黒鉛をプレス成形したもので、焼結カーボン製の板と同等の導電性をもち、かつコストの点で貴金属めっきした金属板や焼結カーボン板に比べると優れていることから、家庭用燃料電池向けPEFCですでに一部採用が開始されているという。