三洋電機の半導体子会社である三洋半導体は7月17日、同社の「低損失バイポーラトランジスタ ECHシリーズ」の新製品となる5品種を発表した。携帯電話、太陽電池用パワーコディショナ、UPS(Uninterruptible Power Supply)、DCモータなどの用途での採用が期待されている。
三洋半導体バイポーラデバイス事業部スモールデバイス開発部の秋葉部長 |
今回の製品では、パッケージング技術におけるクリップボンディング構造とウェハプロセス技術における「MBIT-W(Multi-Base Island Transistor - Wireless)」プロセスの採用により、2.9mm×2.8mmサイズのSOT23クラスのバイポーラ(Bip)トランジスタとしては業界最小レベルの電力損失を実現した同社従来製品比55%低減を達成している。また、電力損失の低減により、放熱が抑制されることにより、システムの小型化にも貢献することが可能となっている。さらに、業界最大レベルとなる電流定格12Aを実現、性能の向上につなげている。加えて、パッケージの小型化を実現、パッケージ材料の使用を従来製品から94%削減、実装面積はTO-252(61.75mm2)から実装面積80%のSOT-23(8.12mm2)に収められている。
クリップボンディングはチップとリードフレームの接続にAu線ワイヤボンディグに代わって、小型のCuフレームをチップに直接する構造となっている。ボンディングワイヤに比べて断面積の大きいCuフレームを使うことで、配線抵抗を削減することが可能となり、高速化、電力損失の低減を実現している。また、同構造の採用によるパッケージに起因する電力損失(パッケージ抵抗)を80%低減することにも成功している。
MBIT-Wプロセスとは、同社独自の2層電極構造プロセス(MBITプロセス)を改良したもの。MBITプロセスは1層電極上に絶縁膜を設け、その上に2層電極を置く、これにより有効動作面積を向上させ、回路性能を引き上げることを可能にしている。しかし、従来は2層電極が平坦化されておらず、クリップボンディングを設置するためのエミッタパッドを設置することができなかった。これに対してMBIT-Wプロセスはプロセスの最適化を進めることで2層電極を平坦化、エミッタパッドとして使用できるようにし、クリップボンディング構造を実現した。
また、エミッタパッドが2層電極に設けられていることから、エミッタパッド下の1層電極の構成は制限されることがなくなる。このため、チップ内の有効動作領域70%向上させる(対他社プロセス)ことに成功している。また、回路設計の自由度が増すことから、チップ特性も70%向上させている。
なお、今回発表されたのは、太陽電池用パワーコンディショナや無停電電源装置などで使用されるIGBTのゲートドライブ回路、各種電源ラインのスイッチ回路、DCモータドライブ回路などに最適化されたシングルタイプ4機種と携帯電話充電スイッチ用途に最適化されたPチャネルMOSFETとPNPバイポーラトランジスタの複合タイプ1機種の5機種となる。サンプル出荷は2009年7月から順次開始、価格は50円から。量産は2009年8月からの開始を予定しており、2009年内には月産100万個レベルの規模に拡大する計画。製造はウェハプロセスは同社群馬工場、組立・テスト工程は同タイ工場で行う。