米Amazon.com内のKindleユーザーのフォーラムKindle Communityで米国時間の7月16日に、購入済みのKindleブックの一部をAmazonがユーザーのKindleから強制的に削除したという報告が相次いだ。

削除されたのは、MobileReferenceというデジタル出版社の「1984」(ジョージ・オーウエル作)と「Animal Farm (動物農場)」(同)。同社はパブリックドメイン作品としてKindleブック化した模様だが、公有となっているのはカナダやオーストラリアなど一部の国のみで、米国ではまだ著作権が保護されている。Kindleストアでの販売は著作権侵害に相当するため、Amazonはすぐに問題の商品をKindleプラットフォームから取り下げ、購入者に代金を返金する手続きを行った。ただ、購入したKindleブックが突然Kindleから消えてしまったことにとまどうKindleユーザーが多く、中には「本棚から勝手に本を持っていかれた気分だ」とAmazonに対する不信感を露わにした声も見られる。Kindle Communityの書き込みを読むと、過去にもHarry Potter and the Half Blood Princeの海賊版がKindleプラットフォームで入手可能になり、同様の騒動が起こったという。

Kindleユーザーは、購入したKindleブックをAmazon.com内の本棚に保管し、WhisperNetという通信技術を通じて本棚内のKindleブックを対応するリーダー端末に同期・転送する。現時点でKindleプラットフォームでは、Kindleストアでの商品の取り扱いが中止になると、購入者の本棚にも反映され、購入者が気づかなければ、そのまま同期を通じてKindleやiPhoneなどのリーダー端末からも消えてしまう。Amazonとしてはリーダー端末からの回収が目的ではなく、権利に問題のある商品の取り扱いを中止した結果、購入者のリーダー端末内のコピーも削除する形になっているようだ。

しかしながら、これが普通の書物だったら、問題が発覚したとしても販売済みの本が強制的に回収されることはないだろう。夏休みの宿題として「1984」をKindleで読み進めていたという学生は、Kindleブックと共に途中までのメモ書きを失ってしまったとこぼしている。削除と代金の返金という対処に納得していない購入者は多い。そもそも流通するはずのない商品が流れたのが、今回のトラブルの原因であり、急成長の裏に見え始めたKindleストアの綻びを、米Amazonがどのように修繕するかが注目されるところだ。