各国において太陽光発電に対する施策が進められている中、一般住宅用ではなく、発電所での活用が期待されている太陽電池がある。いわゆる薄膜Si太陽電池である。同太陽電池は、通常の単結晶Siやpoly-Si太陽電池に比べると変換効率は劣るものの、使用するSi量はCVDにて積層した分だけで済むため、抑えることが可能であり、その結果、太陽電池の製造コストも削減することができる。
一般住宅の屋根のように、限られたスペースに太陽電池を設置し、最も効果的に電力を得るためにはセル、モジュール、パワーコンディショナのどれも高い変換効率にする必要がある。しかし、薄膜太陽電池はそういった使用ではなく、例えば人が住まず、かつ日照量が多い砂漠などに配置して発電することが考えられている。広大な砂漠であれば、何も設置スペースなどを気にする必要はないわけで、それであれば、多少発電量が落ちても、その分を数でカバーすれば良いという考えとなる。
ただし、単位面積あたりで発電量が増えれば、その分、同一面積での総発電量は増えることとなるわけで、それを実現するための方法として2重に膜を積層する「タンデム型」、3重に膜を積層する「トリプル型」などが考案されている。しかし、2層になったからといって単純に発電効率が2倍になるわけではない。下の膜は当然、上の膜が邪魔をするわけだから、光が届きにくくなるためである。
タンデム対応の薄膜ターンキーを発売
半導体製造装置やFPD製造装置、そして太陽光発電製造装置を手がけるアルバックは、これまでもa-Si薄膜太陽電池のターンキーソリューションの販売を行ってきたが、2009年6月に既存のa-Si薄膜太陽電池比で、発電効率を30%向上させ、Wあたりの製造コストを10%削減したμc(マイクロクリスタル)-Si用PE-CVD装置「CIM-1400」を発表、タンデム型薄膜Si太陽電池ターンキーソリューションとして販売を開始した。
通常のa-Si層に、赤色から赤外の波長の光も取り込み、電気に変換できるμc-Si層が加わったことで、発電効率が向上されることとなる。これによりセルの変換効率は9%となり、モジュールの平均出力は130Wp(年間平均生産量32.5MW)となる。
モジュールのサイズは第5.5世代ガラス基板(1100mm×1400mm)に対応。6枚のガラス基板を同時に処理することができるため、ターンキーながら90秒タクトで製造が可能としている。
価格は、製造ライン一式で約90億円、既存ラインへの追加の場合は約40億円としている。
タンデム太陽電池測定装置も開発
また、同社はタンデム型薄膜太陽電池向けに、薄膜特性の評価装置として複合式薄膜特性評価装置「MPEC-1300」を開発、販売を開始した。
同装置は1台の装置で、6つの特性評価が可能な測定機能を搭載している。以下にその6つの特性を示す。
- 電極用金属薄膜の膜厚測定と面内分布を評価する「触針式表面形状測定」
- 電極用金属薄膜の抵抗率分布を評価する「低抵抗率測定」
- μc-Si結晶化率を求め面内分布をマッピングする「Raman分光測定」
- レーザースクライブ後およびTCO(Transparent Conductive Oxide)膜表面の形状を3次元的に評価する「3次元測定」
- a-Si薄膜の光学定数を評価する「分光エリプソメータ」
- a-Si薄膜の抵抗率分布を評価する「高抵抗率測定」
また、第5.5世代までの基板に対応するため、評価のために基板を破壊する必要がなく、その結果、それぞれの測定器を個別に導入する場合に比べ、初期導入コストならびにランニングコストを約1/2に抑えることが可能になるとしている。
価格は全測定機能を搭載した場合で約1億5,000万円としており、TCOのHazeと太陽電池変換効率の分布に関する評価装置も開発を進めているとしている。
発電した電気をどう使うのか
アルバックは2009年6月24日から26日までの3日間開催された「PV Japan 2009」に前述した装置で製造したパネルなどを展示していたが、それらに加えて、海外向け電気自動車(EV)用急速充電スタンドの開発中のモデル「EVQC 5000 シリーズ」の出展も行っていたので、余談となるがこちらの紹介もしておく。
同スタンドのスペックは電圧500V、電流100A(Max 125A)であり出力電力は50kWとなる。電流は10~125Aまで対応可能とのこと。電気自動車側でそこまでの電圧に対応していれば、単純に考えれば電圧が高ければ高いほど、EVへの充電時間は短くて済むこととなるわけで、そうなると、スーパーに買い物に行って、駐車場にEVを停めて、脇にある電気スタンドと接続して、30分程度で買い物から戻ってくると充電が終わっている、ということが当たり前になる可能性もある。
なお、同製品に関して同社では、「to be release soon」としており、早い段階で海外において製品化を予定しているとのことである。