太陽光発電(Photovoltaic power generation:PV)は、太陽電池を利用し、太陽光を電力に変換する発電方式であり、CO2を排出しないクリーンな再生可能エネルギーとして注目を集めている。
2009年6月24日から26日までの3日間、太陽光発電協会(JPEA)と国際半導体製造装置材料協会(SEMI)が共同企画し、太陽光発電の総合イベントとして、PV関連の研究者から、セル・モジュールメーカー、関連製品、部品、材料、装置、サービスを提供する企業、ユーザーが参加する展示会/イベント「PV Japan 2009」が開催されたのは記憶に新しいし、同2月25日から27日には「PV EXPO 2009~第2回国際太陽電池展~」も開催されるなど、半導体製造装置/FPD製造装置メーカーなどの注目も高い分野となっている。
各所から注目を集める太陽光発電市場であるが、ではその市場はどうなっているのか。JPEAの公表した資料と、同協会の事務局長である岡林義一氏がPV Japan 2009において行った説明会での数値などに基づいてレポートしたいと思う。
補助金制度が復活した日本市場
日本の住宅用太陽光発電の導入推移を見ると、2005年度までは一貫して右肩上がりで導入件数は推移、2005年度には7万2,825件の導入があったが、2006年度より導入に関する補助金制度が廃止、これに伴い2006年度は6万2,544件、2007年度は4万9,425件と減少が続いた。しかし、2008年度は、平成20年度補正予算として組まれた「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金制度」が2009年1~3月の間、実施された結果5万5,100件と再び増加に転じた。2009年度も予算として総額200億5,000万円の補助金が組み込まれており、約8万4,000件の住宅への補助金支給が見込まれているという。
日本の住宅用太陽光発電の導入推移(2008年度初頭時の導入推移予測。年度末の補助金支給により、当初予測を上回る設置件数となった。出所:PVかんさい) |
岡林氏によると、従来、一戸あたりに取り付けられるのモジュールの発電量は一般的な住宅で3.4~3.5kW程度であったが、近年は3.7kW(2009年1~3月実績)へと発電量が引き上げられており、「屋根いっぱいに取り付ける傾向が見て取れる」(同)としている。
日本の太陽電池生産量の約8割が海外向け
また、日本の太陽電池出荷量の推移を見ると、国内向けは補助金制度が廃止された2006年度、2007年度と減少傾向が続いたが、海外向けはドイツやスペインなどを中心とした欧州でのFeed-in Tariff(FIT)の進展により拡大が続き、2008年度の発電容量は1,120MWと1,000MWを超え、出荷額も5,073億円と5,000億円を超したものと推測される。なお、国内外の比率は、輸出が78.9%(884MW)、国内が21.4%(236MW)となっている。
市場拡大に伴い世界全体でセル生産量が増加
2008年度は前半に輸出が伸びたが、後半からは市況の影響や欧州でのFITの助成金の減額などの影響により軟調になったという。各国における導入量はスペインが圧倒的に伸びた(2,511MW)ものの、2009年に入り、FITの年間買取枠の上限設置(500MW)などにより、冷え込むことが見込まれている。ただし2009年も、ドイツは買い取り金額の減額(10%)などが行われているものの堅調に推移することが見込まれるほか、米国も2010年にかけて活発化する可能性が高く、韓国も活発化してきており、市場としては成長が続くことが見込まれる。
2008年の全世界での太陽電池生産量は前年比86%増となる6,941MWに達し、内訳としては欧州が1,907MWでトップとなり、中国1,848MW、日本1,224MW、台湾854MW、米国412MW、インド157MWと続いている。岡林氏は「2009年~2010年にかけて米国も生産量を伸ばしてくるはず」との見方を示しており、日本も2008年6月に示された「福田ビジョン」により「導入量を2020年までに現状の10倍、2030年には40倍に引き上げる目標」を掲げており、実現に向けて、官民挙げて取り組んでいくとしており、すでに「スクールニューディール」構想の推進なども進めているという。
同構想は、公立の小中高等学校の耐震化工事やICT化の推進と併せて太陽光発電施設の設置なども推進、学校のエコ化を図ろうというもので、導入だけで終わらず、学校や地域の環境・エネルギー教育に積極的に活用し、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーや、省エネルギーへの理解が社会に広がるような取り組みも含まれているという。
世界的な経済不況により、半導体デバイスメーカーやFPDパネルメーカーなども影響を受けており、そこに装置を納入する半導体製造装置メーカーや液晶製造装置メーカーなどはさらに大きな打撃を受けている。技術的に近しい関係にあるこれらの分野において、比較的好調である太陽電池は、ターンキーソリューションを提供する装置メーカーの台頭もあり、新興企業や異業種からの新規参入も世界規模で増えつつある。結果として、製品価格の競合などが起きる可能性があるが、消費量が供給量を上回る状況が続けば、成長は続く。Applied Materials(AMAT)の意識調査にもあるように、まだ太陽光発電の総発電量に占める割合は圧倒的に低いのが現状であり、日本の場合でも2008年度の総発電量9,578億8,920万8,000kWhに対し太陽光は37万3,000kWhと、実に0.000038%に過ぎない。日の当たる時しか発電できないため、1日のすべての電力を賄うのは不可能だが、太陽光発電の普及は、既存の発電施設の削減にもつながる可能性は高い。