The Green Gridの日本支部は7月8日、技術委員会のもとに「データセンタ・デザインガイド(DCDG)」の日本分科会を発足させ、同プロジェクトを日本で本格的に開始することを発表した。また、併せてThe Green GridのエグゼクティブディレクターにLawrence Vertal氏が就任したことも発表した。

The Green Gridのエグゼクティブディレクターに就任したLawrence Vertal氏

エグゼクティブディレクターとして、同氏は、AMDやIntel、Microsoftなどで構成されるGreen Grid運営委員会の直属として活動することとなる。エグゼクティブディレクターとして初来日となった今回、同氏は「エグゼクティブディレクターとしての最初の仕事として日本に来ることを決めたのは、それだけ日本がGreen Gridにとって重要な地域であることを意味する」と語る。

また、Vertal氏はGreen Gridが提唱する指標「PUE(Power Usage Effectiveness)/DCiE(Data Center Infrastructure Efficiency)」は、今後、さまざまな製品そのものやメーカーの製品開発に対して影響を与えるものに成長していくことを確信しているとし、「製品を使用する側も、選定の際にどの製品を使えば効率が良いのかといった運用の指針にもできる利点などがあり、まだGreen Gridに参加していない企業、団体なども、ぜひ参加してもらえれば」(同)としている。

The Green Gridの技術委員会 副代表のJon Haas氏

Green Gridでは、これまで2つの指標を提供してきたが、現在3つ目の指標となるDCP(Data Center Productivity)の策定を進めている。これは、データセンタの生産性などを計算する指標で、「PUE/DCiEで得た共通認識をベースに、データセンタそのものに意味づけすることが可能になる」(The Green Gridの技術委員会 副代表のJon Haas氏)という。現在はホワイトペーパーの作製を終え、米国にて細かな部分(単位をどうするか、ソフトウェアをどうするかなど)の詰め作業に入っているとしている。

The Green Gridの提供する指標各種とその意味

DCPは、生産性を測定するためのコンセプトとなる

このほか、並行してDCDGの作成が進められているが、Haas氏によると、DCPはデータセンタの生産性を測定するためのコンセプトの提示であり、DCDGは具体的にどのようにソフトを活用し測定を行っていくかというもの、との区分けがなされるという。DCDGは、具体的には各ICT設備と施設の設備などを管理インフラでそれぞれをつなげることで、エネルギー効率の高いデータセンタの設計と運営を施設全体で実現しようというもの。

データセンタ・デザインガイドの概念と理念

このため、「データセンタで使用している製品の価値を高める」(同)ことができるようになるほか、さまざまなデータを集めて定義することができることから、それを現場にフィードバックし、高まる電力削減ニーズに対応するITインフラの構築の提案につなげていくことが可能になるとしている。

The Green Grid 日本技術委員会 代表の田口栄治氏

この一環として、DCDGの日本分科会が7月7日に設立された。「DCDGに対する取り組みは全世界規模で行われているため、そういった各地域との重複は避け、3つの分野に注力する」(The Green Grid 日本技術委員会 代表の田口栄治氏)という。その3つというのは、1つ目が日本の法律と環境の影響を受けやすいセンサ、計測機器、電源、空調といった「施設関係」。特にセンサや計測機器は「こうした機器については、日本がリードしている分野であり、グローバルに向けて日本から情報を発信していきたい」(同)と語る。

2つ目は、マネージメントソフトウェアを含んだ「運用」に関する部分。田口氏は、「高品位なデータセンタの運用ノウハウが日本にはある」としており、これを世界に向けて発信していくとする。3つ目は、「データセンタ事業者の視点」であり、「ビジネスモデル、既存の建物・運用に関する改善など、運用者の視点で、既存のデータセンタをどう改善していきたいのかのガイドラインを提供していきたい」(同)とする。

日本でのニーズを吸い上げ、それをDCDG全体に反映させるのが日本分科会の役割

同ガイドは、業界標準を目指したデータセンタ設計ガイドとして2010年にドラフト版の完成を目指しているほか、2011年には全体的なデータセンタ構築の指針の提供のほか、その後も毎年、その時々の課題や技術を取り入れて改変を行っていくという。

2011年以降も毎年、その時々の課題を含み更新されていく計画

また、日本の組織としては、「できれば8月の早い段階から、"フリー・クーリング・マップ日本版"の提供を開始したい」(同)としているほか、会員/非会員の区別なく使えるオンライン教育サイト「グリーン・グリッド・アカデミー」を9月1日より一般公開する計画としている。フリー・クーリング・マップは、すでに米国では提供を開始しているツールだが、郵便番号を入力すると、その地点に存在するデータセンタが、外気を用いることで、どの程度電力を下げることが可能になるかを算出してくれるというもので、現在、日本には42カ所のデータ収集ポイントがあるが、「今後、検討を進め、最適な収集ポイント数を見つけていく」(同)とする。

「フリー・クーリング・マップ日本語版」(外気を用いることで、データセンタの電力消費を抑制することができるようになる)

「グリーン・グリッド・アカデミー」オンラインの教育サイトとして9月1日より公開予定

なお、田口氏は、「二酸化炭素排出抑制のためIT機器メーカーのみならず、広く協業を進め、多くの業種に参加してもらいたい」とし、積極的に異業種との関係構築を行っていくとしている。