太陽光発電に関する開発、製造、施工を行う企業および団体が一堂に会し、製品やサービス、研究結果などを紹介する総合展示会「PVJapan 2009」が6月24日~26日にかけて幕張メッセで開催された。このレポートでは、一般的な平板パネル型のウェハー系太陽電池モジュールとは異なるアプローチを行っている企業の取り組みを紹介しよう。なお、一般市場に向けた太陽電池/モジュールを製造している企業の最新技術動向は既報を参照していただきたい。
シリコンの使用量が少ない集光型球状シリコン太陽電池
製造コストの点で有利とされる「球状シリコン太陽電池」を紹介していたのは、京都市にあるクリーンベンチャー21。同社の製品の特長は「集光型」を採用していること。集光型は、直径1mm程度の球状シリコン粒子と電極を兼ねた直径2~3mmの反射鏡を組み合わせたもので、反射鏡の凹面により集光能力を上げている。これにより、1/5以下のシリコンの使用量でシリコンウェハー系と同等の発電性能を得られるという。球状シリコンは、溶かしたシリコンを一滴ずつ自由落下させ表面張力で球形化し、結晶化させることで製造する。シリコンの切削工程が無いため切断ロスが生じず、原材料もウェハー系と比較して少量でよいため低コストで製造できるとのこと。
そのほか、同社では開発中の「高集光型 球状シリコン太陽電池」を展示していた。反射鏡のカップを深くして集光性能を高めたもので、シリコンの使用量はウェハー系と比べて1/30と非常に少ない。垂直の入射光に対して発電効率が高くなる特性を持ち、追尾型の太陽光発電システムに最適なモジュールだという。追尾型で従来より使用されているレンズ式の太陽電池と比較して、精密な追尾精度が不要、薄型で軽量、冷却が不要などのメリットがあるとしている。
フィルム型アモルファス太陽電池は曲面へ設置できる
富士電機システムズは、軽量でフレキシブルという特長を持つ「フィルム型アモルファス太陽電池」を展示。同社は、太陽光発電システムメーカーや建材メーカーなどへの販売を主体とした事業展開を行っている。プラスチックフィルムを基板とする同太陽電池の厚さは約1mmで、1m2あたりの重さは1kg程度。ガラス基板の太陽電池に比べて1/10以下と軽量なため、建物への荷重負荷が少なく大面積化が可能だという。曲面上への設置ができるため、デザインにこだわる建物や景観法に即して美観を重視した場所への導入に最適とのこと。保管時には半径10cm程度まで曲げても問題なく、実際に設置する場合は発電効果を考慮して半径1m以上を推奨するとしている。
同太陽電池の製造は低温プロセスで行なわれ、結晶シリコン系の太陽電池より製造時のエネルギー消費を低く抑えることができるという。また、原料となるシリコンの使用量は結晶系と比較して約1/200と少ない。環境に優しく省資源で低コストといった特長があるが、結晶型よりも発電効率が低く、同じ発電量を得るために必要な設置面積は大きくなるとのこと。そのほか、温度係数が小さい特性のため高温になる夏場の効率低下が少なく、同等の定格容量を持つ結晶シリコン系の太陽電池と比較した場合は年間発電量が約10%多いという。
曲面に設置できる「フィルム型アモルファス太陽電池」。一枚の大きさは460×3,399mm、厚さは1mm。最大出力は92W。右は同電池を使用した「建材一体型モジュール」の説明パネル。建材一体型も曲げられる |
同社ではフィルム状の製品の他に、鋼板上に太陽電池を貼った「建材一体型モジュール」を展開する。また、ラインアップ拡充のため鋼板一体型やアルミフレーム型の製品の発売を予定している。
従来の4倍の大きさの薄膜太陽電池モジュールも登場
半導体製造装置および太陽電池製造装置を取り扱う米Applied Materialsは、5.7m2という大面積のガラスを使用した薄膜太陽電池モジュールを展示していた。一般的な太陽電池の約4倍の大きさとのことで、1辺は2mを超える。同社のシステムを利用して中国のENN Solar Energyが3月に製造したもので、生産コストや設置工事費の削減に効果があるとのことだ。