アルコニックスは1981年に旧日商岩井系列企業を母体として分離独立し、アルミニウム、銅やレアメタル・レアアースを扱う非鉄金属商社だ。現社名の「アルコニックス」というアルミ、銅、ニッケルの頭文字をつないで「X」を加えた造語には、非鉄金属商社という枠組みにとどまることなくさまざまな可能性に挑戦し続けるという強い意思が込められている。同社では、内部統制を整備するにあたって、情報システム部門を立ち上げ、SAPを導入することにした。ここでは、同社が障害を克服しながらSAP導入を成功させるまでの過程を紹介しよう。

内部統制対応に向けて新システム導入を決意

アルコニックス 情報システム部 部長 森一訓氏

設立以来順調な成長を続けてきた同社が、基幹システムの改修を検討し始めたのは2006年頃だという。それまでは旧日商岩井がグループ企業向けに展開していた独自システムを利用していたが、同システムは徐々に時代に合わなくなってきていた。

「旧システムでは内部統制に対応できないと指摘されたこともあり、新システム導入に向けての取り組みが本格化しました。しかし、独自システムを構築するほどの時間はなく、既存のERPシステムを導入するのが現実的だろうと判断しました。6社からの提案を受けた中の半数がSAPであったことから、SAPの導入が有力視されました」と語るのは、情報システム部長の森一訓氏だ。

自社開発テンプレートがベンダー選びの決め手に

SAPの提案を受けた当初、導入にかかるコストの大きさや多機能さが一瞬の足踏みをさせたという。「最初、当社はそれほど大きな企業ではないのでもっと小規模なシステムで対応できるのではないかと考えました。しかし貿易のウェイトの高い商社である以上、SAPクラスの機能が必要だと気づいたのです」と森氏。最終的にテンプレート機能に魅力を感じてSAP導入を決断、見積りを提出していた6社の中から住商情報システムを選んだ。

「こちらの勝手な思い込みですが、住商グループである住商情報システムは商社に詳しいだろうという期待がありました。また、同社がSAP Global Trade Managementの開発に関わり、テンプレートを自社開発していることにも魅力を感じました。テンプレートが住商情報システム自身の製品であるということは、導入時だけでなく導入後にも大きな安心につながりました。質問をした場合も、開発会社に問い合わせることなく、自社で判断して回答してもらえるのでとても助かっています」と森氏は語る。

システム導入に向けて社内初の情シス部門を設立

実はSAP導入を検討し始めた当初、アルコニックスには情報システム部門が存在しなかった。それまで、旧日商岩井系列の企業がシステム管理を担当していたため、情報システムを運用管理する体制がなかったのだ。新システム導入にあたって人材登用を行い、新たに情報システム部門が設置されたが、長く自社システムの面倒を見てきた情報システム部門とは違った問題があった。

「プロパーで社内にいたわけではない技術者の集まりですし、私もシステムに詳しいわけではありませんでした。未経験で分からないまま指示を出さなければならないのは辛く、ベンダーを信じてやるしかないという状況でした。今になっては反省点もあります」と語るのは、情報システム関連の業務を統括する専務取締役経営企画本部長の山下英夫氏だ。