日立製作所は大阪大学の廣瀬明夫教授らのグループと共同で、200~250℃で半導体素子と基板の接合が可能ながら、接合後は500℃を超す耐熱温度を有する高温環境向け鉛フリー接合技術を開発したことを明らかにした。

SiCとの接合部界面

従来、高温環境向け接合材料は、鉛を含んだ材料が用いられてきたが、環境保全などの観点から、近年では代替材料としてAgナノ粒子を用いた接合方法などが検討されている。しかし、Agナノ粒子は高価であり、かつ接合時にAgナノ粒子を安定化する目的で用いられている保護膜を、300℃程度の加熱により除去する必要があり、接合温度の低温化に限界が生じるなどの課題があった。

今回開発された技術では、酸化銀マイクロ粒子をより低い温度で加熱・還元させるため、新たな還元促進剤を新たに開発したほか、Agナノ粒子接合と比べ、粒子の安定化に用いられる保護膜を不要化し、接合温度の低温化を実現した。また、Agナノ粒子接合法の特長である高放熱・高耐熱性も実現した。

加えて、PbやSnを主原料とした接合材ではAlやTi電極が形成する酸化物層を除去する必要があったが、新たに酸化物を除去することなく直接Al、Tiなどを接合するためには、酸化銀マイクロ粒子を還元させる際に、発熱反応を短時間生じさせることが有効であることを発見。これにより、AlやTiのほか、SiやSiCなどの半導体素子と直接接合することが可能となったほか、ステンレス材やガラス材への接合も確認された。

日立では、同技術は、接合材の作製や保管が容易なことから、接合コストの低減が可能なほか、表面に酸化物を形成する材料についても酸化膜を除去せずに接合できる。また、接合温度も低く、有機材料などへの応用も期待できるとしている。