「空港で預けた荷物が目的地に届いていない」「預けた荷物が行方不明」――こんな経験をした人はいるだろうか? だが、こうしたフラストレーションも近く緩和されるかもしれない。

原油価格上昇に経済低迷によるビジネス客急減と未曾有の不況が航空業界を襲い、各社がIT投資抑制を含むコスト削減を実施するなか、利用者の利便性を向上する投資は続けていく意向だという。その成果の1つが共通化されたKiosk端末で、ユーザー自身の操作で同端末を通して荷物の追跡が可能になるという。

航空業界向けにITサービスを提供するSITAが7月1日(米国時間)に発表した航空各社へのアンケート調査結果によれば、2009年のIT投資額は売上全体の1.7%で、9・11同時多発テロ勃発直後の2002年以来最低の水準となった。バブル経済による需要拡大に合わせて新規投資を続けてきた航空会社だが、目の前に需要減という大きな壁が立ちふさがり、こうした投資にもブレーキがかかりつつある。

こうしたなか、別のトレンドが顕在化している。それはユーザーの利便性を高めるツールの拡充と、"Self"という形でユーザー自らが操作することで間接コスト削減の2つを同時に実現することだ。格安航空会社がインターネット予約でコスト削減を実現してきたように、航空各社は過去何年にもわたって発券システムなどを中心にシステムのIT化とインターネット対応を進めてきた。

SITA会長で英British Airways CIOのPaul Coby氏によれば、インターネットでチェックインが可能になる「Web Check-in」機能の普及率は現在62%だが、今後3年で全体の92%にまで達する見込みだという。また予約変更やキャンセルの機能を2010年内にWebページへの実装を完了する企業の割合が、現時点の37%から44%になるという。これもコスト削減の一環だ。

そして近年増えている「Self-Service Check-in Kiosk」と呼ばれる空港カウンターに設置されたチェックイン端末だが、アンケートによれば全航空会社のうち74%が同端末に新機能追加を計画しているという。追加される新機能は「預け入れ荷物の追跡」「フライトの振り替え」などで、2008年の調査結果の18%の導入意向から、2009年には26%まで増加している。

米Wall Street Journalの1日付けの記事によれば、こうした荷物追跡機能を搭載した端末は今年末にも登場し、荷物の識別バーコードをスキャンさせることで現在の荷物の位置情報を取得できるという。今日、こうした情報の取得には係員への依頼で45分程度の時間がかかっているが、これをユーザー自らの操作で2分以内まで短縮できる。これには荷物紛失で航空会社や空港が被る余分なコストを削減する狙いもある。また究極的には、現在航空各社が独自に用意しているCheck-in Kioskを各社一元化し、1つの端末ですべての航空会社のチェックイン業務を賄えるようにすることで、さらなるコスト削減も計画しているという。