MathWorksは7月1日、同社の日本法人として「マスワークス合同会社」を同日付で設立したことを発表した。日本本社を東京に置くほか、名古屋、大阪にも拠点を開設。これにより、日本の自動車、通信、エレクトロニクス、半導体、産業オートメーション、機械を始めとした産業分野などのほか、大学などのユーザーにMATLAB/Simulinkの営業およびサポートを直接提供することが可能となった。
これまで、日本での同社製品の販売およびサポートは販売代理店のサイバネットシステムが行ってきており、両社は良好な関係を築いてきた。日本に法人を設立し、直接販売に切り替える訳を来日し、説明を行ったMathWorksのMathWorks FellowであるJim Tung氏は、「確かにサイバネットとの結びつきは強かったが、MathWorksは次のステップに昇るという方向に舵を切った」と語る。この次のステップというのは、「顧客が安心してMathWorksのツールを活用してもられる環境を提供することで、それは開発企業が直接行う必要がある」(同)とするほか、「日本は幅広い分野に強い企業が存在して居り、MathWorksとしても直接サポートを行っていく価値があると判断した」と説明する。
また、日本法人の設立によりさまざまな副次的な効果も期待できるとしている。1つは、米国ではすでに実績のある金融分野やバイオ関係でのMATLAB/Simulinkの活用であり、もう1つは自動車やエレクトロニクスといった分野の世界的企業からのニーズの直接的なフィードバックが可能になるという点である。加えて、こうした多くの顧客に対し、代理店を経由した場合、MathWorksが保有する他社事例などのノウハウが正しく顧客まで伝わるとは限らなかったし時間もかかっていた。今後は直接本社エンジニアとのやり取りが可能となるため、そうした技術ノウハウの伝達なども簡便になるはず、としている。
日本法人の従業員は約120名。この中にはサイバネットでMATLAB/Simulinkにたずさわってきたスタッフの多くも含まれているという。
また、日本法人の社長を務める梨澤利隆氏は、短期的な目標は3つあると語る。1つ目は、顧客のニーズを知ることで、ソリューションの提供につなげていくこと。2つ目は、法人としてスムーズな立ち上げを実現すること。3つ目はMathWorksのカラーを前面に押し出すことで知名度を向上させていくこと、としている。
なお、MathWorksでは、MATLAB/Simulinkを活用することで、各種設計の早期検証が可能になるとしており、早期検証を行うことで、「1つ目は早い段階でエラーを潰すことができるようになる。2つ目はプログラムが増えれば増えるほど、元のエラーに派生して発生するエラーを生み出さないで済むようになる。3つ目は、エラーの修正にかかるコストを低減することができるようになる」(Tung氏)としており、モデルベースデザイン(MDB)を導入することで、シミュレーションを上手く活用できるようになり、結果として要件の妥当性が保証され、設計上の欠陥の早期検出が可能になるとする。
また、デジタル家電のように複雑に多数のハードウェアとソフトウェアが絡み合っている場合、検証時間とコストの増加が問題となるが、そうした場合でもマルチドメインのシステムを想定し、仮想コンポーネントと結合していくという考えが必要であり、しかもそれは、「単に各コンポーネントを結合するのではなく、デジタル回路、アナログ回路といった各回路を結合していくという意識をもって行う必要がある」(Tung氏)とした。
なお、日本法人の設立でも、既存顧客との関係は基本的に変わらないとしているが、サポートとしてこれまで以上に詳しいFAQの紹介やデータ提供速度の向上、MathWorksの提供するオンライン教育への参加などが可能になるとしている。