Spartan-6/Virtex-6対応評価キットが登場

FPGAベンダ大手のXilinxは、同社のFPGA開発環境「ISE」のバージョン11.2を発表すると同時に、ISEを同梱したSpartan-6およびVirtex-6の評価キットを提供することを明らかにした。

これらの評価キットは、同社のターゲットデザインプラットフォームの基板となるベースプラットフォームに位置づけられているもので、Spartan-6評価キット「SP601」には、FPGAである「Spartan LX16」のほか、同FPGAと搭載した評価ボード、ISE Design Suite 11.2 WebPACK、リファレンスデザイン、入門用デモ、ボードデザインファイル、ドキュメント、USBケーブル2本/LANケーブル/電源ケーブルが同梱される。SP601は現在注文を受け付けしており、参考価格は295ドルとなっている。

一方、Virtex-6の評価キット「ML605」は、FPGA「Virtex-6 LX240T」を採用。その他の同梱されているものはSP601と同様のもので、7月末より注文の受付を開始。参考価格は1,995ドルとしている。

左が「SP601」の概要、右が「ML605」の概要

これまでと大きく変わったISE 11.2

これらの評価キットは、従来の同社の評価キットとさまざまな点に変更が加えられているが、一番大きな変更点はISE 11.2だ。同バージョンについて、同社Director Product Marketing,Worldwide Marketing and Business DevelopmentであるBrent Przybus氏は、「Spartan-6/Virtex-6の完全なサポートは当然だが、"ロジック設計者""エンベデッドシステム・ハードウェア設計者""DSPアルゴリズム設計者/システムエンジニア""システムインテグレータ""エンベデッドソフトウェア開発者"の5つに対し、従来比2倍の実行速度、XSTを利用した論理合成の速度を平均2倍に向上、ワークステーションのメモリ必要量平均28%低減、配置配線の最適化によるダイナミック消費電力の10%低減、Mentor、Cadence、SynopsysシミュレータによるSecureIPシミュレーションの高速化などが施された」と語る。

XilinxのDirector Product Marketing,Worldwide Marketing and Business DevelopmentであるBrent Przybus氏(手に持っているのが「SP601」)

また、最大のポイントとして、「新たにFPGA設計を始める人に向けて使いやすいようなシステムを開発した」(同)という点が挙げられる。そのため、評価キットの箱を開けて、機器のセットアップにかかる時間(ツールのインストールも含めて)通常3時間程度とボード機能の評価と立ち上げ,それにリコンパイル作業で1時間程度かかっていたのが、「慣れている人であれば10分もあれば可能となる」(同)という。

10分で使えるようになる評価キット

実際に、Przybus氏がSP601を開封し、PCと評価ボードにUSBとLANを接続、同梱ツールの1つである「Base Reference Design Interface」を起動させ、リファレンスデザインをロード、デモを開始するまでの時間は10分程度であった。この時間短縮だが、同評価キットからISEの提供形態が若干変わり、キットを入手した後にISEをダウンロードしていたが、今回からはオーダーをした時点でダウンロードが可能となったほか、「ベース・リファレンス・デザイン」などUSBメモリで提供することで、使い勝手の向上とセッティングの時間短縮が図られている。

「SP601」にUSBケーブル、LANケーブル、電源ケーブルを挿して起動させたところ

また、ISEのインタフェースも大幅に変更が加えられている。大まかに述べると、画像処理のデモの場合では大きく「イメージキャプチャ」「コントロール」「ステータス」に分割されており、各部分ごとに機能が分けられている。

画面左が「Base Reference Design Interface」(3つの部分に区切られている)で、右側の2つの画像が処理効果前(中央)と後(右)を示している

ベース・リファレンス・デザインには、DDR2メモリとのインタフェースに内蔵メモリコントローラが搭載されているほか、ソフトIPのギガビットイーサネット(GbE)によるPCとの連携、クロックモジュールやコンフィグモジュール、リセットモジュール、UARTが用意されているほか、プロセッシングブロックにはDSPなども配置されている。

ベースリファレンスデザインの基本構成

デモでは、複数の画像エフェクトが用意されており、DSPとロジック(LUT)を選ぶことで修正前/後の違いなどが見れるが、DSPとロジックの変更もチェックをどちらかに付けるだけで瞬間的に自動的に変更(マルチブート)されるほど容易になっている。なお、始めからこのようなアプリケーションが複数、Xilinx側から提供されているため、ユーザー側で新規に設計する必要がなくなることから、例えば画像処理アプリケーションを新規設計する開発時間(一般的に12週間程度)も短縮することが可能だ。

開発のためにはソースコードを書く必要があるが、リファレンスデザインのソースコードもVerilogにて提供されており、自由に追加/修正/削除をでき、付属のChipScope Proを用いることで、ほんの数秒でチップの再構成も可能だ。Przybus氏が行ったデモでは、GPIOを追加、ボード上のボタンを押すだけで、設定された画像処理が実行できるようになったものを見せてくれた。

VerilogもしくはVHDLを用いてリファレンスデザインのソースコードを書き換えることで、機能追加も可能

このほか、評価ボードにはFMC(FPGA メザニン・コネクタ)用ソケットを用意(SP601には1つ、ML605には2つ)してあり、これにそれぞれの専門用途の拡張カードを挿すことで、さまざまな用途に対応することが可能となる。すでにXilinxのほか、サードパーティ各社からも提供されることが決まっており、2009年第4四半期ころから提供が開始される予定という。

さまざまな機能を持ったFMCを接続することで、さまざまな用途に対する評価が可能となる

なお、同社では評価キットのほか、各種用途に合わせたリファレンスデザインなどを用意したキットを複数提供していく予定としている。

今後の提供が予定されているSpartan-6とVirtex-6向けの各種キット