『日本の政治とTwitter - 党首討論ライブ中継の逢坂誠二議員に聞く(前編)』はこちら
iPhone所有の国会議員は多い?!
現在(2009年6月24日)、各議員をフォローしているユーザー数は、逢坂誠二氏(民主党)(Twitterアカウント)が約3,000人、橋本岳氏(自由民主党)(Twitterアカウント)が1,700人となっている。両氏ともに6月初め頃のフォロワーは数十人程であったが、Twitter上で「日本の国会議員のTwitterアカウント」とRT(Retweet=他人のポストを自分のアカウントで再配信すること)でクチコミ的に広まり、増えていった。党首討論中継を行なった日には、新しく約1,000人のフォロワーが逢坂氏に付いた。
周りの国会議員の方たちからは何か反応があるのかを訪ねると、「まったくない。という以前に、Twitterを知っている議員がほとんどいない」ということだ。これは余談だが、興味深かったのは「先輩議員の方たちには、iPhoneを所有している人は意外に多い」こと。iPhoneにレザーケースを付けて使用している姿を見かけるそうだ。また「その反対に、若手はiPhoneのようなガジェットを持つことをあまりカッコいいと思っていない様子」とも話していた。
──今後の政治家と有権者の間の、ネット上のコミュニケーションのあり方について
逢坂 ネット上のコミュニケーションツールを万能とは思ってはいないが、生まれた時から携帯やパソコンがある世代が育って来ている中で、政治をもっと身近に感じてもらうために活用すべき有効な道具と捉えています。Twitterでの呟きも、政治への関心の度合いが少しでも高まってくれればという想いがある。また、いつどのようにして会議開催の日程や内容が決まるのかなど、"国会の作法"のような表に現れにくい部分について、ネットでどんどん答えていくことで、実際の国会を知ってもらえれば、より政治が身近に感じられ自分のことになっていくのではないかと思う。
──選挙におけるネット活用について
逢坂 パンフレットなどの紙の広報物について、ネットにはない良さもあるので否定はしていない。しかし、ネットと併用することによって、さらに相乗効果が高まるのではないか。有権者にとってはチャンネルが広がることが大事で、また意見が述べやすくなるために、政治に参加しやすくなるといったメリットもあるだろう。ネット上での炎上を心配する声が大きいが、それはパソ通時代からも起こっていたこと。今の時代、こそこそ隠れてやるよりも、バシッとやって「炎上したら仕方がない」という覚悟でやるしかない。マニフェストも配る場所を決められているので、選挙期間中こそネット閲覧を可能にして、政策についての論議がされるべきではないか。イラン大統領選挙でのネットやTwitterでの動きを見ていても感じることだが、社会運動をやるうえで欠くべからざるツールとなっているネットの活用を止めるというのは、もはや非現実的だと思っている。
ネットの持つ不思議な力 - 相手と会いたくなる、知りたくなる
逢坂氏自身が、総務省に問い合わせた回答にもあるように、現行の公職選挙法の下では「Twitterについても、選挙運動のためには使用することができない」といった制限がある。さらに現状の法解釈では、それが本人ではなくても「○○さんに投票してください」などとブログに書いた場合には違反行為となる。公職選挙法については、それを変える動きや意識を持つ議員が集まっての勉強会などはないのだろうか。これについては、逢坂氏は次のように語っていた。
「もちろん、重要な検討事項という認識はあって、議論はしてきている。前回の総選挙の後、民主党から法案改正の提案が出たが、採決は成らず、そのまま立ち消えになったという経緯があるので、もう一度、再燃させないといけない。次の総選挙には間に合わないが、その後、選挙のネットの活用のあり方は議論されると思う。民主党が政権をとったらとあえて言わせていただきますが、この分野は力を入れていくべきことと考えている。」
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今回のインタビューで、逢坂氏がネット活用の推進を語る一方で、リアルのコミュニケーションについて、「文字によるコミュニケーションには限界があるのは事実。会ってみたらこんな穏やかな人が、何であんな過激なこと書くの? ということもある。実際に会って、皮膚感覚で伝えることに勝るコミュニケーションはないと思っている。ネットって不思議なもので、不特定多数とのコミュニケーションを通じて行く中で、必ず相手と会いたくなる、もっと知りたいと思うようになって行くもの」と語っていたことが大きく印象に残った。
逢坂氏は、約20年前のパソコン通信初期に、NECのPC-VANを利用する仲間を募ってオフ会を開いたそうだ。「たぶん日本で初めてのオフラインミーティングだったと思う」(本人談)とのことで、九州など各地から15人ほどが集まった中には、東京のNEC本社の人もいたそうだ。「実際に会うとやはりコミュニケーションが深まる。機器の精度、スピード、情報量等、当時よりも何倍にもなったが、ネットのコミュニケーションとリアルのコミュニケーションの在り方は大きくは違わない」と逢坂氏は語った。
実際にお会いした逢坂氏からは、パソコン通信やインターネットを初期の頃から見てきた中で、リアルのコミュニケーションとのバランスも意識しつつ、現代のネットの有効性を追って行きたいといった勢いと姿勢を感じた。現役の国会議員としては稀な存在であろう。
Twitterは議員と有権者が交わり、法案について論じられる場となるか
政治家がホームページを持ち始めるようになってから十数年が経った。もともと公職選挙法は1950年に制定された法律で、インターネットなどは想像もされていなかった時代のものである。その法律が実情に合っていないにも拘らず、また、選挙のたびに話題は出てくるものの"選挙活動でのネット解禁"の話は立ち消えになってきた。民主党のみならず、自民党や他党からもネット解禁の声は出て来ている。しかし、結局は、選挙時にならないと優先順位が下になってしまうのだろうか。
ネットの実情が分からず、炎上や中傷非難を恐れる消極的な議員が多いのかもしれない。今のままだと、ネットでの選挙活動については、法改正を審議する議員らの世代が変わるか、大きなムーブメントがないと実現は難しいと感じている。ちなみに総務省の選挙制度改革の取り組みのページを見ると、平成19年6月1日の「在外選挙制度について」以降の選挙制度改革の取り組みはアップデートされていない。そこには、ネットの有効性を知っている有権者たちからの声が必要だろう。
十数年の間には、音声や動画のコンテンツが溢れるようになり、ブログの時代が来て、SNSやTwitterのようなソーシャルメディアが盛んになるといった具合に、ネットの様子も大きく変化してきた。Twitter利用によるイランでの市民からのジャーナリズムのあり方や、それに対する各国のユーザー、メディアの反応を見ていると、Twitterが日本の公職選挙法改正へのきっかけになってもおかしくない。
逢坂氏の話を伺って、同氏のような感覚を持った議員たちが、ネットのソーシャルメディアをどんどん積極的に活用することで、有権者が関心を持ち、自分たちも積極的に介入し相互に論議されることが、国会の選挙制度改革審議を前進させる最大の手なのかも知れないと感じた。また、有権者であるネットのユーザーも、これからは考えなければならない時代になったと言えるだろう。もはや、次回の総選挙の公示日以降にTwitterユーザーが一斉に「○○さんに一票を!」と呟いたとして、その全員が公職選挙法違反になるなんて、あまりにも非現実的な話ではないだろうか。
プロフィール:逢坂誠二 民主党衆議院議員
1983年 北海道大学薬学部卒業後、ニセコ町役場勤務。総務課財政係長などを経て、1994年11月から2005年8月までニセコ町長(3期)を務める。2005年9月から衆議院議員。次期総選挙は、北海道8区(渡島桧山管内)から出馬。
参考資料:2006年の民主党の解禁案PDF/ 選挙制度改革の取り組み/ 総務省:選挙や政治資金について/ 東京都選挙管理委員/ 議会ストリーミングサイト(衆議院TV)・参議院TV