Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは6月29日、都内で記者説明会を開催し、同社のRF IC事業について、ADIのRFおよびネットワーキング・コンポーネンツ事業部担当Vice PresidentのPeter Real氏が解説を行った。

ADIのRFおよびネットワーキング・コンポーネンツ事業部担当Vice PresidentのPeter Real氏

同氏によると、同社は売上の20.7%(2008年度の売上高は約25億8,000万ドル)を研究開発費として充てており、これによりイノベーションを実現し、製品の差別化に結び付き、RF IC事業においても、「主要な市場において、シグナル・チェーン全体で差別化を実現できるようになっている」と語る。そのため、製品ラインナップも多岐におよんでおり、「世界でも屈指の充実した製品ラインナップをあらゆる顧客に提供できる体制が構築されている」(同)とする。

シグナルチェーン全体の提供を行うことそのものも差別化要因となるという

ADIが提供するRF領域の製品の一部(もちろん、こうした製品を集積した製品も提供を行っている)

RFのブロードバンド化に対応

また、現状のRF市場について、「従来のRFはナローバンドであったが、さまざまなものが無線化し、そして高速な通信が要求されるようになるブロードバンド化が進んでいることから、より多くの帯域への対応とさまざまな用途に対応できる機能が求められている」(同)としており、特にブロードバンドに対応するRF ICの市場として、基地局などの"ワイヤレス・インフラストラクチャ"、試験/計測機器、通信機器などの"産業用/計測機器"、ソフトウェア無線や軍事用無線などの"軍事用途"の3つが挙げられるという。

こうした分野に対するRF ICとして同社では、共通プラットフォームを採用したICを提供することで、さまざまな周波数帯や通信規格に対するシステムの設計を簡素化することが可能となるほか、設計期間の短縮、高集積化に伴う部品点数の削減、基板サイズの縮小、部品(BOM)コストの削減などが可能となるとしている。

さまざまな通信規格を1つのプラットフォームで対応することで、システム設計者の負担を軽減することが可能となる

通信の方式、規格から半導体技術までカバーすることで、システム開発におけるあらゆることに対するサポートが可能となるという

シグナル・チェーンの一環としてツールも提供

また、RFを活用したシステムの開発用に向けたツールの提供も各種行っている。例えば、設計用シミュレーションツールとして「ADIsimRF」の無償ダウンロードサービスを同社のWebサイト上で開始している。

設計用シミュレーションツール「ADIsimRF」の特長

同ツールは、RFシグナル・チェーンで、カスケード接続におけるゲイン、雑音指数、IP3、P1dBや全消費電力などのパラメータを計算することが可能なもので、同社のRF製品のシミュレーションを行うことが可能なほか、他製品についても特性を入力することで、各部品に対するシミュレーション結果を最大15ステージまで表示することが可能となっている。

また、PLLシミュレーションツールとして2002年より同社が提供している「ADIsimPLL」のバージョン3.1の無償ダウンロードサービスの提供も開始。同ツールは、ループフィルタおよびVCOを含めた周波数、および時間軸での入出力特性のシミュレーションが可能。同バージョンでは、分数Nスプリアス・ノイズ推定に対する新たなシミュレーション機能や、新しいVCOライブラリなどが提供されている。

「ADIsimPLL ver3.1」の特長

加えて説明会では、Data Pattern Generator(DPG2)および、Data Capture Boardを組み合わせたデモも実施。こちらは、WCDMAを用いたもので、PC上で作成した波形データをDPG2に送信、それを16ビットA/Dコンバータ搭載の評価ボードを介し、復調ボードを経て、Data Capture Boardに取り込み、その結果をPCに返すというもの。これにより、信号波形の確認などが行えるようになる。ちなみに価格は参考価格ながらDPG2が約5,000ドル、キャプチャボードが約600ドル程度としている。

デモの全景(左)と各素子の接続などを示すツール「Visual Analog」(右)(FFTにより作成した波形の処理したものなども表示ができる)