古河電気工業(古河電工)と富士電機アドバンストテクノロジーは6月22日、GaNを用いたパワーデバイスの共同開発を目的とした技術研究組合を設立することを明らかにした。これは、2009年4月30日に公布された「改正鉱工業技術研究組合法」により、技術研究組合を会社に組織変更して研究開発成果を事業化することが可能となり、また2社間の同意をもって認可申請でき、また手続の簡素迅速化が成されたことによるもので、改正鉱工業技術研究組合法の適用1号に向け申請することとしたもの。組合は2009年7月に発足予定で、GaNパワーデバイスは2011年度中の実用化を目指すとしている。
これまでLED向けに使われてきたGaNは、パワーデバイスとしても、高耐圧、低損失、高速スイッチングデバイスとして高い可能性を有しており、実用化しようという試みが近年進んでいる。すでに結晶欠陥の低減や、デバイス性能の改善が進められており、2~3年以内にスイッチング電源などに望まれている高効率電源の開発に供せられる試作品を製作することが可能になると見込まれている。同組合では、こうした試作品を他社などに先駆けて提供することで、製品化に向けたアドバンテージを獲得するのが狙いとなる。
2社の主な役割は、古河電工が行ってきたGaNによるトランジスタやダイオードの研究開発のノウハウを、富士電機側は、パワーデバイスの設計開発、生産プロセス技術の知見を持つ研究者や技術者を融通するほか、資金面でも2社で負担することにより、大規模な研究開発体制を構築することで、開発期間の短縮につなげるという。
同組合では、GaNパワーデバイスを、コスト要求の厳しい低中圧の応用分野への適用を有力視しており、主にハイブリッドカーや電気自動車を主力市場に位置づける。また、産業用電源や汎用インバータなども重要市場と位置付けるとしている。
初年度の研究場所は、古河電工の横浜研究所内を予定。予算8億円で、研究部員22名体制でSBD(ショットキーバリアダイオード)およびMOSFETの開発を行う。具体的なプロセス開発としては、エピタキシャル結晶成長技術を用いることで、Si基板上にバッファ層の堆積条件を制御して品質の改善を行うほか、スイッチングに適用可能な低損失のダイオードとMOSFETを低コストで実現するためのデバイス構造やプロセス技術の開発に向け、デバイス構造の検討を行うと共に、パワーデバイス実装の観点から実装構造の検討および信頼性の評価を実施する。
また、パワー半導体素子としてのGaN SBDならびにMOSFETの特長を踏まえ、既存のSiやSiCデバイスに対し、優位性を見出せる適当な市場の調査検討も行い、その分野で要求される素子の仕様、要求コストの明確化を行い、開発目標への反映ならびに、事業にどのように展開するかの提言なども行っていく予定としている。
なお、今後3年間のスケジュールとしては、2009年度が600V耐圧SBDの原理試作とプロセス課題抽出、ならびにMOSFETの構造検討と原理試作、2010年度がSBD、MOSFETの構造最適化サンプル製作、2011年度がエンジニアリングサンプルの製作と量産ラインの検討としている。