国境を挟んだサイバー戦争の舞台は"電力網"の世界にまで拡大し、国の根幹を成すインフラに危機を及ぼす――こうした映画等でありがちなシチュエーションが現実のものとなりつつある。米Wall Street Journalの6月18日(現地時間)付けの記事によれば、こうした事態に対抗するため、米国の電力会社らが共同で海外からのスパイ活動状況の把握や対応の検討に向けた業界運動を起こしつつある。
これは今年4月に主に中国とロシアを中心とした国々からのスパイが米国の電力網を管理するシステムへと侵入し、密かに活動を続けていたことを政府関係者らが明かしたとWSJが報じたことに端を発する。それによれば、中国人スパイらは電力システムといった米国のインフラ網を把握することを目的としており、来たるべき有事に備えているというのだ。こうしたインフラ網への侵入は年々増加しており、昨年は非常に多くの活動の痕跡が見られたという。だが一方で侵入の多くはインフラを運営する電力会社らによって把握されておらず、これがサイバースパイの付け入る隙になっていると関係者らは頭を悩ませている。
インターネットを介した企業スパイや防衛システムへの侵入といった話はよく聞くが、国の根幹となるインフラをターゲットにした話を聞くことは比較的少ない。これが対応が遅れがちになる理由のひとつかもしれない。
WSJが18日に報じた内容によれば、こうした事態を受けて北米電力信頼性評議会(North American Electric Reliability Corpopration: NERC)がサイバースパイらの活動を把握する専門職の設置の検討に入ったという。またサイバー攻撃に対抗するためのセキュリティ強化に向けた試験プログラムも策定中だ。国のインフラ防衛に向けた試みが、静かに動き出している。