NECとNECエレクトロニクスは6月17日、信頼性が求められるシステム向けのLSIに対し、故障予知を低コストで実現することが可能な「プログラマブル故障予知技術」を開発し、性能実証が可能なLSIを試作、基本動作の確認を行ったことを発表した。同成果は、6月15日から開催されている「2009 Symposium on VLSI Technology」において発表されたもの。
LSIの故障予知は、LSIの誤動作を未然に回避し、正しい動作を継続するための信頼性維持技術。従来の故障の事後対処型の高信頼維持は、万が一故障が発生したときの対処が冗長化などにより複雑化し、回復処理が大掛かりとなる欠点があったが、故障予知では未然に故障を防ぐ対応ができるため、高信頼性システムを低コストで実現可能となる。
今回開発された技術は、主に「故障の前兆を捉える精度」を向上する技術と、「前兆を捉えることができる故障の種類」を拡張する技術の2つによって構成される。前者は、LSI内部に、既存の回路に加え、クロック信号のタイミングを微妙にズラす変調回路を追加した二重化回路を構築することで、二重化回路の各出力の演算時間を比較、演算時間の変化量が故障の警告を出す範囲(予知ウインドウ)内となった場合に、故障の前兆として検出。クロックの変調度合いに応じて決まる予知ウインドウの大きさをプログラム可能とすることで、高い検出精度の設定を実現するというもの。これにより、LSIの性能とトレードオフの関係にある故障予知の精度を、LSIが組み込まれたシステムの動作中に、LSIの個別の製造バラつきや使用環境、さらにシステムの用途や機能などに応じて、柔軟に変更することが可能となる。
一方の、"前兆を捉えることができる故障の種類"を拡張する技術は、二重化回路において、2つの回路中のクロック信号をそれぞれ二系統に分離、二相化するというもの。演算回路の前後のクロック信号のタイミングをズラした二相化にすることで、LSIの微細化で問題となる、演算回路の遅延時間が長くなる故障モードだけでなく、遅延時間が短くなるような複雑な故障モードでも、故障の前兆を捉えることが可能となる。
このため、これらの技術を組み合わせて開発された今回の技術は、従来の高信頼性を重視したLSIに比べ、システムの動作速度性能や電力性能を2倍程度向上することが可能になるという。
なお、両社は今後、LSIの微細化や大規模化により、高信頼性の低コスト化が難しくなると考えており、今回の技術を用いることで、低コストで人と密接に関与する領域でのLSI利用拡大を促進し、"安全・安心"で便利な社会を実現するための研究開発を推進していくとしている。