日本オラクルと富士通は6月16日、富士通のエントリレベルのストレージシステム「ENERNUS4000」上でOracle Database 11gを活用したILM(Information Lifecycle Management: 情報ライフサイクル管理)ソリューションの検証結果を発表した。同ソリューションにより、従来の技術では難しいとされていたデータベース情報のライフサイクル管理が、低コストかつ低消費電力で実現できることが実証されたという。両者は今後、この検証結果をもとに、データベースILMを推進するためのアセスメントサービスを連携して提供していく予定だ。

企業で取り扱う情報は、構造化データと非構造化データに大きく分けることができる。構造化データはERPなどの基幹システムやデータベース上で格納されているデータ、非構造化データは文書ファイルや画像ファイル、Excelデータなどファイルベースのデータを指す。

一方、ILMは、各データの価値を時間の経過を基軸に算出し、そのデータの価値に応じて最適なストレージを選択、自動でデータをマイグレーションさせるソリューションである。アクセス頻度が高く、パフォーマンスも求められるデータは"Tier 1"と呼ばれるオンラインストレージに、年に1、2回しかアクセスしないようなデータは長期保存用オフラインストレージ(Tier 2)に、その中間にあたるデータはニアラインストレージ(Tier 2)に、といった具合にデータを保存するストレージに移行する。現在Tier 1にある情報も、時間の経過とともにアクセス頻度が下がり、Tier 2、Tier 3へとマイグレーションしていくしくみだ。ディスクもTier 1には高価で高性能なFCディスクを、Tier 2/Tier 3には安価なSATAディスクを割り当てる、といった使い分けがなされることが多い。

日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏

このILMを実現しているソリューションは、いくつかのITベンダから提供されている。だが、それらが主に非構造化データを対象にしたILMソリューションであるのに対し、今回、オラクルと富士通が発表した検証結果は、データベースに格納されている構造化データのマイグレーションが「通常業務に影響を与えることなく実行できた」(日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏)というもの。データベースのマイグレーションは「簡単にできそうで、実は実現が難しかった技術」(富士通 ストレージシステム事業本部 ストレージシステム事業部 事業部長 有川保仁氏)というが、これは一部のデータだけ抜き出してマイグレーションさせるという作業が困難なため。しかもパフォーマンスの維持も非常に難しいという。また、データベースでは「注文日」「支払日」などアプリケーション内の日付データが重要なのであって、非構造化データのように「ファイル更新日」をもとにILMを行う従来のアーキテクチャでは限界があったという。

富士通 ストレージシステム事業本部 ストレージシステム事業部 事業部長 有川保仁氏

今回の両者の検証では、ハードウェアに富士通のUNIXサーバ「SPARC Enterprise M4000、M3000」2ノード、ストレージシステム「ETERNUS 4000 モデル500」を、データベースに「Oracle Database 11g」の「Oracle Partitioning」と「Oracle Real Application Clusters」をそれぞれ使用。データベースに格納するデータをOracle Partitioning機能で分割し、ETERNUS上のFCディスク(Tier 1)とSATAディスク(Tier 2、Tier 3)の領域に、格納するデータの特徴にあわせて移動/配置が行われた。1カ月ほど実施した検証の結果、「ETERNUSとOracle Database 11gのILMソリューションは、従来実現が困難だったデータベースILMの運用手順を実証した。同一筐体内でFCとSATAがブロッキングを行うという事例は他に類を見ないのではないか」(三澤氏)という。この検証結果は、ホワイトペーパーとして公開されている。

この検証結果で画期的というべき点は、エントリレベルのストレージでも、Oracle Database 11gの機能と組み合わせることでデータベースILMが実現可能であることを実証したこと、つまり低コストでの運用が可能になったことだろう。J-SOXの施行やディザスタリカバリへの対応などで、企業が保存しておかなければならない構造化データは増大する一方だが、ILMによる構造化データの管理が低コストかつ省電力で実現できれば、運用管理にかけるコストを大きく削減することができる。さらに今回の検証では、実行中の業務に影響を与えないRAIDマイグレーション機能(ETERNUS)、パーティションの領域サイズを柔軟に変更できるMOVE PARTITION機能(Oracle Database 11g)という2つのデータ移動方法が実証されている。目的に応じて移動方法を選べる点も非常に大きなメリットだろう。

オラクルと富士通は今後、この検証結果から得られたノウハウをILMソリューションとして連携したアセスメントを提供していく予定だ。

データベースに格納されているデータでも、階層化したマイグレーションが可能ということを実証した「ETERNUS + Oracle Database 11g」の検証結果。アクセス頻度が少ないデータを、高性能ディスクから安価で低速なディスクへと自動的にマイグレーションさせられるという

今回の検証は東京・青山にある日本オラクルの本社ビル「オラクル青山センター」内のデータセンターで行われた。実際に検証に使われた「SPARC Enterprise M4000、M3000」(左)と、大きな威力を発揮した「ETERNUS 4000 モデル500」(右)