12日まで幕張メッセで開催された「デジタルサイネージジャパン(DSJ)2009」。一回目となった今回は、国内・海外含めて60社近い企業が参加した。まだ動き出したばかりの市場に対し、ニーズとソリューションの探り合いといった姿勢も見られる中、独自の発想や技術を活かした提案が目を引いていた。


独自色を打ち出すシステム

大手企業を中心に数多く展示されていたのが「コンテンツ制作/管理+配信+表示機器」をパッケージにしたシステム。それぞれ、簡易導入や高品質動画配信、無線配信など様々なニーズを想定し独自色を打ち出そうとする姿勢が見られた。

大規模商業施設やインテリジェントビルだけでなく、中小規模の店舗や公共施設等へいかに浸透を図るか、という点を考えた製品も多い。ある担当者に話を聞くと「ハード、コンテンツという売り方より、トータルな提案が必要。導入後の活用をサポートする提案が求められている」という。

「MallVision」NTT AT

フルハイビジョン映像を滑らかに再生するハイスペックシステム。管理者からIP網経由で配信されたコンテンツを専用プレーヤーにダウンロード、スケジュール再生するほか、設置店舗が独自に文字を加えるなどの加工が可能。写真は配信された弁当の画像に「残り僅か」の文字を加えたもの

「ビルアド」NTT IT

低価格化、コンテンツ管理操作を簡単にするなど、導入の敷居を下げることを狙ったローカルネットワーク向け製品。コンテンツはストリーミング配信される。広告市場をターゲットと想定したが、実際には学校、病院などで活用されている事例が多いという

「R/Signage」菱洋エレクトロ

PowerPointをベースにしたコンテンツ制作ツールと、業界に合わせた多彩なテンプレートをパッケージ。ディスプレイアダプタは無線LAN対応で設置を簡易化。様々な面でデジタルサイネージ初心者を意識して開発したシステム

「Spot Media」NTTコミュニケーションズ

ASPにより配信プラットフォーム共通化、および配信業務のアウトソーシングで導入コストや運用の人的負荷を軽減。ウィルコムの回線を使ったコンテンツ配信も可能で、D4がそのまま表示端末となる。オプションで香り発生装置との連動が可能


デジタルならでは、インタラクティブを活用

デジタルサイネージでは、カメラやセンサーなどを使ったインタラクティブなシステムを構築することが可能だ。レコメンド機能やマーケティングとの連動、アイキャッチなど様々なアイデアを組み込んだシステムが展示された。

「インタラクティブデジタルサイネージ」NTT/NTTドコモ

人の進入・接近などの状況や人数をカメラで捉えて映像を切り替えたり、携帯電話をリーダーにかざすことで属性・嗜好・行動履歴を反映したコンテンツをレコメンドするなど、参考出展ながらかなり具体的なシチュエーションでの提案。ある意味で、現段階における究極の姿かもしれない

「カメラによる広告効果測定技術」NTT

デジタルサイネージ(ディスプレイ)に取り付けたカメラでサイネージの前のエリアを撮り、画像からその場にいる人数や画面に注目している人数を算出する。「画面を見ている顔の数÷その場にいる人数」が「注目度」となる

「Vitracom SiteView」構造計画研究所

人や車の数・動きを検出するシステムを応用。もともとは客の動線などマーケティング向けのシステムだが、デジタルサイネージとの連動で人の滞留時間や顔向け率、棚接触率などの効果測定および最適なコンテンツ配信などを提案

「インタラクテイブ3Dデジタルサイネージ」NTTコムウェア

同社が独自に開発したCGと実写の3D合成技術を応用し、ディスプレイの前の通行人が合成された立体広告映像を自動生成するシステム。ステレオカメラで撮影されるため、通行人も3D映像になっている

「フキダシステム」オックスプランニング

投影された画面の輝度差分をカメラで検出すると、移動体に付随してエフェクトを表示させるシステム。同時に複数の移動体に対応することができる。汎用性が高く、低コスト、設置が容易なことも特徴。イベント等での導入事例が多いようだ

「Saika for Scala」エヌジーシー

顔認識の技術を応用し、カメラで撮影した人の顔に対してリアルタイムで変身アイテムや動きのあるコンテンツを合成する。見る人を主役にすることで滞在時間が延び、注目度が高くなるという。広告コンテンツやテロップと組み合わせて表示することも可能


ハード面でのソリューション

「薄型・軽量の液晶ディスプレイ」日本ビクター

32インチで厚さ7.8mm(最薄部6.4mm)、重量約5kgの薄型軽量ディスプレイ。壁掛けや天吊りなどの設置が容易で、薄さを活かした様々な設置方法に対応。入力は映像信号。表面にカラーパネルを貼り付けることで"きせかえ"が可能

「ディスプレイポスター」オックスプランニング

CFカードスロットを搭載することで、本体のみで放映可能な"電子ポスター"。表示画像はJPEG・BMPに対応し、付属ソフトで表示時間や切り替え効果を設定できる。専用スタンドに取り付ければ場所を選ばず設置できる。右側に付いている白い機器は、FeliCa対応携帯電話にURLを送信する装置。ポスターとの連動によるサイト誘導を提案していた

「携帯電話画面を利用したデジタルサイネージ」大日本印刷/日立製作所

専用アプリをインストールした携帯を表示機器として使用するシステム。複数の端末の画面を連動させて1つの画面のように動かすことができる。コンテンツは通信で配信され、地域や時間帯で制御可能。実際にauショップで試験サービスが行われた


ソフト面での製品・サービス

「enVision」デジタルニッチアーカイビング

画像・動画・音声などの大量のデータを様々な形に高速で一覧表示。切手程度のサイズから雑誌ページの文字が読めるほどまで、マウスやタッチパネルで拡大/縮小/移動を自在に操作。同社はコンテンツ制作を請け負っており、プレイヤーをインストールすることで一般的なスペックのPCで再生可能

「prezivion」ソフトアドバンス

3Dアニメーションを手軽に作成することができるプレゼンテーションソフト。大量のテンプレートを搭載し、コンテンツ制作初心者だけでなく、ディスプレイ等のハードウェアベンダー向けにバンドル販売のニーズを見込んでいる

「業務用BGVライブラリー」アトリエビジョン

同社の自主制作素材よる著作権フリーのBGV(バックグラウンドビデオ)ライブラリー。同サービスでは、デジタルサイネージシステム提供会社等が、同サービスのコンテンツ配信サーバから各ユーザー企業のサイネージに素材を提供できる


変わりダネ

「chumby」ジークス

初代iMacのデザイナーがデザインしたウィジェット専用端末。FlashLite3.0対応で、多くのユーザーが開発・投稿したウィジェットをサーバからダウンロードして使う。OSはLinux、ハードの仕様もオープンで、外部機器を使用するウィジェットも開発可能。システム的には大型ディスプレイにも対応。広告配信や双方向サービスなど、ビジネス面の可能性も大きい。今回の展示会では唯一のパーソナル向け製品

DSJ Vision

展示会主催者による企画展示として会場各所に設置されたもの。セミナーや主催者からのインフォメーション、CG映像、ニュース配信のほか、来場者がメールで送ったメッセージを表示する