かつてはSCSIカードで高い評価を得ていたAdaptec。1999年に半導体部門をSTMicroelectronicsに売却し、半導体ベンダという立場から、SCSIのほか、USB、IEEE1394、iSCSI、ファイバーチャネル、SATAなどのインタフェース機器などを製造、販売する機器ベンダへの立場にその軸足を移し、ビジネスを展開してきた。
しかし、2008年にRAIDチップやストレージ向けチップなどを手がけていた米Aristos Logicを買収。これにより、半導体ベンダとして返り咲きを果たした。この買収により、Adaptecはどのような舵取りを今後執っていくこととなるのか、同社のVice President,International Salesとして、欧州、アジア地域を統括するJared Peters氏に話を聞いた。
RAIDビジネスに注力も付加価値を模索
上記のような経緯を辿ってきたAdaptecについて、Peters氏は「現在のAdaptecは、その初期の頃と比べ、大きくビジネスを変化させてきた」と語る。現在、同社が注力しているのは、SASとSATAの両方に対応できるUnified Serial RAIDコントローラを搭載したRAIDビジネス。「この2~3年で、製品ラインナップは大きく変わった」としており、実際にRAIDカードの主力は「Series 2」「Series 3」「Series 5」と呼ばれるものに置き換わっている。
しかし、RAIDが一般的に用いられるようになってきた現在、「RAID単体では、コモデティ化してしまい付加価値が見出せなくなってきた」(同)というように、付加価値をどのようにして付けていくかが重要な課題となっていたという。
同社の主なビジネス相手は、OEMカスタマとディストリビュータ/インテグレータといったチャネルカスタマの2種類。特に、チャネルの方が強く、「OEMも強化したいと考えた結果、Aristos Logicの買収を決定した」という。
どういうことかといえば、「一度、Adaptecはチップビジネスから撤退した。もう一度チップビジネスを手がけることで、それを付加価値として加えることができるようになる」というわけである。ちなみに、現行のSeries 3やSeries 5に搭載されているRAIDコントローラは、Intelのチップ(Sunrise Lake)を用いているが、「OEMビジネスを展開する上では、自らがチップを手がけることが、供給や信頼性、テクノロジの保護などの面で顧客からの信頼となる」ということである。
Aristos買収の意味
Aristosの手がけてきたチップは現行は第3世代品であり、IBMのブレードサーバなどにも搭載された実績を持つ。こうした製品を手に入れることで、Adaptecの市場機会は、今までの内蔵用RAID(DAS)から、外付けRAID(NAS/SAN)やブレードサーバへと広がることとなる。これらのアプリケーションの市場規模は、サーバがTear2やホワイトボックスを相手にしていた既存ビジネスが2億ドル程度に対し、OEM市場は8億ドル、外部ストレージが、ローエンド向けのみ相手にしていた既存ビジネスが5,000万ドルだったのに対し、OEMストレージは4億ドル、ブレードに至っては市場参入できなかったものが、1億ドルの市場への参入が可能となる。「買収により、ビジネスが拡大する。この合算した市場規模は大きく、ビジネスチャンスだ」とPeters氏は語る。
これらの市場はAdaptecのこれまでのビジネスを考えれば決して新しいものとは言い切れない。しかし、「一度手放したことを考えれば、新たな市場と考える必要があり、将来にわたって注力していくことが必要な分野」とする。
こうした市場に対し、Adaptecとしては、マーケットトレンドに対応したソリューションを提供していくことで、付加価値とし、ビジネスを拡大していく考えで、2008年10月より提供を開始した「インテリジェント パワーマネジメント機能」の活用による既存のストレージアレイなどのグリーンIT化で得た知見なども活用していくという。