カーエレ開発向けロボット

ゼットエムピー(ZMP)は6月9日、ロボット技術を搭載したカーロボティクスプラットフォーム「RoboCar」の販売を開始したことを明らかにした。すでに受注を受け付けており、出荷は6月末からを予定。海外への販売も見込んでおり、初年度で国内外併せて200台の販売を計画。すでに100件近い受注を受けており、そのうち半数弱は海外からの引き合いという。

外装(ボディ)を搭載した「RoboCar」(ボディカラーは赤と黄色の2色が用意されている)

外装を外した状態の「RoboCar」

ゼットエムピー代表取締役社長の谷口恒氏

同プラットフォーム発売に際し、同社代表取締役社長の谷口恒氏は、「クルマの新機能、新技術はエレクトロニクスにより生み出される」ことを指摘、中でも「電動化」と「知能化」が重要であるとし、「未来のクルマ、"未来カー"を実現するカギはロボティクス(カーロボティクス)にあり、それを実現するためにはソフトウェアが必要となるも、それを開発するためのハードウェアプラットフォームが必須となる」と語る。

実車プラットフォームでの研究もできないわけではないが、研究室では大きすぎるなどの問題があり、大学の研究室での開発などを想定すると、小型でデスクトップにも置ける程度のプラットフォームが要求されていたという。そのため、今回のプラットフォームは1/10スケールモデルとなっている。

主な搭載機能としては、2つのカメラとNECエレクトロニクスの画像認識用並列プロセッサ「IMAPCAR」、レグラスの画像処置技術を用いたステレオ画像認識モジュール、赤外線測距センサ、レーザレンジファインダ(LRF)、ジャイロ・加速度センサ、4軸独立回転速度計などがあり、これらのセンサを複合的に組み合わせた「センサフュージョン」な環境にも対応するという。なお、センサおよび基板レイアウトのイメージは、自動車に近い機構を取り入れており、本格的な用途にも対応が可能だという。

センサ/基板レイアウトイメージ

画像認識モジュールと各種センサ

主なターゲットおよび用途としては、自律自動車/自律ロボットの研究開発、学校/企業のエンジニア教育、安全技術の研究開発、省エネ/環境技術の開発、無線通信を利用した車車間通信の開発、ICT技術開発、ディーラーやショールームでの新技術ディスプレイなどを想定している。具体的には、MATLAB/Simulinkなどを用いた制御理論の実習や、初期の自律アルゴリズム検証、群制御、自動車間通信などの実験、自動車が人間を認識するヒューマトロニクスの研究などが想定される。

ターゲットとする分野とその分野での目標

仕様の概要(CPUにはAMDのGeodeを採用)

ステレオ画像による障害物認識デモの様子(赤、緑、青各線が人で、距離に応じて色分けしている)

白線検知によるレーンキープ走行の様子(白丸が白線を検知して認識した箇所)

ボディデザインのポイントは"かわいい"

znug designのPresident,Vision Creatorである根津孝太氏

同プラットフォームは、外装なしバージョン「RoboCar」のほか、外装ありバージョン「RoboCar Z」をオプションとして用意。外装なしだと、各種センサ類などが裸の状態で外部にさらされることとなる。外装(ボディ部分)は、トヨタ自動車で「i-unit」のコンセプト開発リーダーを務めるなどの実績を持つznug designの根津孝太氏が担当。

同氏によると、ロボットカーのデザインを考えたとき、「カメラやセンサの搭載や知能化により、未来のクルマのデザインをするのと同義と考え、『感じて・考える』クルマのカタチを作ろうと思った」という。

「感じて・考える」クルマはどういったものか、イメージを固める

その際に重要なポイントとなるのが、「クルマの『頭』?、センサの『穴』?、カメラは『目』?、という3つ」であったという。"頭"で問題になるのは、クルマから飛び出したステレオカメラ部分であり、その下にあるLRFの後方まで回り込むセンシングエリアをどう活かすかという点。頭を一体化するか、頭を別体化するかで、センサを活かせる別体化を選択、下部を円弧的な線で面を構成、カタマリ感を表現し、ボディのカタマリから頭がポップアップしたようなイメージにした。

円弧的な線で面を構成、カタマリ感を表現しつつ、頭をポップアップ

また、センサは、最近の自動車にすでに搭載されている場合があるが、「多くがないほうが良い、というデザイン処理」であり、ロボットカーでは、「周囲を感じる」という意思表示をさせることを目的に、あえてセンサの存在を感じさせるデザインとして、帯上にして"目"で「見ている感」を出し、なおかつ拡張性・発展性を予感させる効果も狙ったという。

周囲を感じるという意思表示とともに、拡張性・発展性を予感させるデザインを検討

そこで、プロトタイプをデザインしたところ、ZMPの谷口社長より、「イマイチ"かわいくない"」との指摘を受け、「"かわいい"ということは何か、イタリアとかで使われる"kawaii"は色々な意味を含んでいる」という考えから、工業デザインかキャラクターデザインか、ということを突き詰め、「工業デザイン手法のキャラクターデザイン」を採用したモデルをイメージ。谷口氏からも、「後頭部もかわいい」という言葉をもらい、正式決定となったという。

左が初期デザインで、右が最終デザイン(丸みが増したような感じで、よりキャラクター的になったように思える)

ちなみに価格は、外装なしが駆動用バッテリ/充電器、サンプルソフトウェア3本や3カ月無償保守サービスなどを含めて59万8,000円(海外向けは7,000ドル)、外装ありが129万8,000円(海外向けは1万5,000ドル)となっており、その他オプションとして、リアルタイム画像認識モジュール39万9,000円(アカデミック価格)、レーザレンジファインダ19万円、電源バッテリセット2万790円、年間保守9万円が用意されているほか、根津氏デザインのボディも単体で70万円で販売される。なお、ボディカラーは黄色と赤の2色を用意。黄色は根津氏が、赤は谷口氏が選択したカラーとのこと。

「RoboCar Z」を持つ根津氏(左)と谷口氏(右)