マイクロストラテジー・ジャパンのプレジデント 印藤公洋氏

企業の事業活動から発生する多種多様なデータを収集、分析し、経営に活用するBI(Business Intelligence)の重要性が近年、きわめて高くなっている。米Microsoft、米Oracle、独SAPなどのような大手ソフトウェアベンダはこぞってBI専業ベンダを買収、この領域での主導権を握ろうと競っている。このような潮流は、IT産業での、BIの比重がいっそう大きくなっていることの証ともいえる。そのようななか、これら大手の陣営に属さず、独立系ベンダとして孤塁を守っているのが、米MicroStrategyだ。同社の日本法人であるマイクロストラテジー・ジャパンのプレジデントにこの4月就任した印藤公洋氏に、BI市場の見通しと戦略について聞いた

--BI分野が大きく変動しているが。

この2年ほどでBIへの関心が大きく高まった。エンドユーザー企業だけではなく、ITベンダも、注目すべきソリューションであるとの見方をするようになっている。データウェアハウスアプライアンスにも、Hewlett Packard、Teradata、Netezzaなどが続々参入しているが、企業で使われるデータの量が膨大になるとともに、データ分析への需要が拡大していることのあらわれであり、これらは同一の流れでもある。BIベンダを取り巻く市場環境は、今、非常に大きく伸びている。

かつて、BI分野はほとんど専業ベンダばかりだった。BusinessObjects、Cognos、Hyperionなど、ソフト市場全体からすれば、これら各社は規模が大きくはなかった。SAP、IBM、Oracleなど大手のベンダもBIの必要性を認識したのだが、自社開発というわけにはいかず、これらの大企業が軒並みBIベンダを買収した。しかし、以前は、BIベンダ自体が、予算編成、連結決算などのアプリケーションを持つ企業など、さまざまな企業を買収していた。BIの機能をより広くすることが目的だった。

--大手の傘下に入ったBIベンダと、MicroStrategyの違いはどのような点か。

これらのBIベンダと当社は、大きく異なる点がいくつかある。BIは、データウェアハウス(DWH)からデータを抽出/検索して、さまざまに分析するわけだが、データベースにデータを格納する前の段階には、ETL(Extract/Transform/Load: データを活用しやすいようにするしくみ)があったり、データクレンジングのツールなどがある。さらにBIの先には、OLAP、あるいは、予算編成、財務、利益管理などの関連アプリケーションがある。他のベンダの多くは、これらの関連分野にも手を出しているが、我々はBIのコア部分に特化している。この立場の違いは大きなものだ。

インタビュー中、ホワイトボードを使ってBIとDWHの関係を図解してくれた印藤氏。「我々はBIのエンジンにあたるコア部分に特化している。ほかのBIベンダにはない強みはここから生まれる」(同氏)

たとえば、BusinessObjectsから見ればHyperionは敵になる。BIのコアから関連アプリケーションまでを手がけているからだが、MicroStrategyは水平分業の姿勢をとっている。だから、敵にはならない。BIの最もコアな部分に経営資源を集中させているので、関連アプリケーションなどは、世に出ているベストのものと組み合わせていけばよい。

--いまや少なくなった、独立系BIベンダとしての利点は何か。

MicroStrategyの本社は米国ワシントンの郊外にあり、同じ建物の中に研究/開発の組織がある。他社の場合、研究/開発拠点やサポート拠点が世界のあちこちにあって、それぞれの業務は別々の要員が行うこともあるようだが、我々は1カ所に集約している。この地は西海岸とちがって、人の動きが安定しており、各要員は長期にわたって勤務している。つまり、それだけ業務の質が高くなっている。いわば、地政学的な差異が製品の質の差となって現れてくる。限られた経営資源は、いかにしてうまく活用するかが重要になる。我々はBIのコアから逸脱するようなことはしない。結果として、品質はきわめて優れていると自負している。

--製品の特徴、他社との違いはどこにあるのか。

当社の製品はオブジェクト指向により、コンポーネントは流用が可能で、テンプレートも用意されており、開発生産性は高い。実際、BIというソリューションは"差分"という概念に乏しい。新しい製品を開発する際、前の製品と重複する部分が多ければ、その差分だけ付加することで、すべてをゼロから作らなくて済む。データベースのデータをより早く読める最適化エンジンを我々は持っている。BI自体の処理が早ければ、サーバの能力が高まることになる。テクノロジを最大限生かすことが大きなテーマだ。テラデータのDWH上で動くBIのシェアは、当社がナンバーワンだ。これは一般の市場でのシェアより高い。BIの品質が高く、DWHの性能がより活かされていることを評価されているわけだ。金融、通信、小売など、扱われるデータや蓄積される量が大きければ大きいほど、ハンドリングの違いが大きな差になってくる。