マイクロソフトが7月16日に東京ミッドタウン・ホールにて開催するイベント「ReMIX Tokyo 09」。マイクロソフトのソフトウェアや、Webサービスに関するユーザーエクスペリエンス(UX)への取り組みを、Webデザイナーや、インタラクティブデザイナー、Webプロデューサーといったクリエイター向けに紹介するこのイベントで、マイクロソフトは何を伝えようとしているのだろうか? 「ReMIX Tokyo 09」に関わるマイクロソフトの春日井良隆氏と池田武史氏に話を訊いた。

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今回、「ReMIX Tokyo 09」について語ってくれたマイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部のふたり。左がデベロッパービジネス本部デザイナー製品部の池田武史氏、右がデベロッパービジネス本部デザイナー製品部マネージャーの春日井良隆氏

「ReMIX Tokyo 09」はWebに関わる全ての人のためのイベント

――まず、おふたりのマイクロソフト及び「ReMIX Tokyo 09」における役割を教えてください。

春日井良隆(以下、春日井)「私達はマイクロソフトでデベロッパー&プラットフォーム統括本部という部門に所属しています。マイクロソフトという会社はWindowsというOSのベンダーであるわけですが、このOSをお使いいただくためには、OSで動くアプリケーションを開発する方々への支援がとても重要であると考えており、我々の技術や製品を開発者の方々に訴求することがこの部門のミッションとなっています。そして、Windows Vistaからはユーザエクスペリエンス(以下、UX)が大きくフォーカスされたこともあり、開発者に加えてデザイナーの方々にも訴求をする必要性が出てきました。私が統括しているデザイナー製品部では、デザイナーを対象にしたマーケティング活動を行っており、今回のReMIX Tokyo 09はその取り組みの一環という位置づけになります」

――今回のイベントのキーワードにもなっているUXへの取り組みについて訊かせてください。

春日井「UXという考え方が、これまでのアプリケーション開発と決定的に違うのは、デザインやインタラクションという要素が加わるということです。『コーディングやプログラミングが…』という部分に加えて、ユーザーにとっての体験、つまりエクスペリエンスをどう届け、どう演出するのかを考えることがとても重要になりますので、開発者に加えて、デザインをする人々、つまりデザイナー、クリエイターに対しての訴求が大切だと考えています」

池田武史(以下、池田)「私はオーディエンスマーケティングマネージャーとして、オーディエンス、つまりデザイナーの方々に幅広く春日井の話した弊社の取り組みの啓蒙を行うという役割を担当しています」

――現在、デザイナーやクリエイターというと、かなり広い解釈が成立します。このイベントはその中でも、どういう方々に向けたものなのでしょうか?

池田「デザインに興味のある人向けですね。マイクロソフトも実はデザインに対して熱い取り組みをしているという部分が、まだ現場の、特に日本のWebデザイナーたちには伝わっていないので、その部分をアピールしていきたいのです。Webデザイナーといっても、色々な人がいて、グラフィックを作ることに尽力している人もいれば、コーダーのようにブラウザーの中で綺麗にコンテンツを成立させようとしている方もいる。また、アニメなどや動画で動きを見せることに尽力している人もいる。このような方々の中でも特にインタラクティブデザインに興味のあるかたには、マイクロソフトの「Silverlight」を知って使っていただきたいのです。ただ、一方的にコンテンツを見せるだけでなく、インタラクティブ性を配慮したWebサイト。そのWebサイトを見た人がアクションを起したときに、どういうリアクションを返すのが親切で面白いかという部分での優れたデザインを考えるヒントにして欲しいです」

――Webクリエイターに、このイベントでマイクロソフトからWeb制作のヒントを得て欲しいということですね。

池田「そうですね。今のWeb世界では、Webデザイナーにとって出来る事はたいがいやり尽くされてる感があるようです。これから先が見えないというか、何か物足りないという声をよく聴きます。そういうクリエイターの方々に対して、新しいコンピューティングの可能性、その利用方法、Webとの付き合い方を示していきたいですね。もちろんマイクロソフトだけなく、様々なパートナーからの新しい技術もこのイベントでは展示していただきます。もちろんこれからの話も多いので、あくまでも完成品でなく、ヒントでいいと思うんです」

マイクロソフトの考えるクリエイティブとは?

――規模は大小ありますが、ツール開発側は、様々なクリエイター向けのイベントを開催しています。そうした既存イベントとマイクロソフトのReMIX Tokyo 09との差異というか特色を教えていただきたいのですが。

春日井「写真や印刷、映像と比較すると、Webのクリエイティブでは、ある程度の技術力は不可欠です。たとえば、WebサイトのデザイナーはHTMLやCSSを理解していくことが必要ですし、配信という側面ではサーバーの知識も必要です。つまり、Webの世界では、クリエイティブは技術力とは切り離せず、言い方を変えれば、クリエイティビティと技術力を組み合わせることによって、素晴らしい作品が生まれるといえます。そういう意味で、我々には各種サーバー製品を始め、.NETという開発者に馴染みの深い技術を提供してきており、ReMIX Tokyo 09で大きく取り上げることになるSilverlightやExpressionはこうした技術との連動、連携が盛り込まれています。こうした部分が特色になると考えています」

――Silverlightのお話が出ましたが、現状、WebではやはりFlashの印象が強いのですが。

春日井「Flashコンテンツのほとんどはバナーに代表されるアニメーションではないでしょうか。それもトゥイーンを利用したアニメーションですね。ActionScriptを駆使できるFlashの制作者はさほど多くないと思います。RIAという側面で考えた場合、VBやC#を扱える開発者の方はたくさんいらっしゃいますし、こうした言語が扱えるSilverlightの価値には、このイベントを通じて、きっと気づいて頂けると思っています」

池田「Flashは決められたタイムフレームの中で、アクションを起していく思想で作品を作っていきます。一方で、インタラクションというのはそれが決められていなくて、ルールを決めた中であとはユーザーの反応や行動によってアクションが決まって行くというものなのです。店舗を例にするとバナーや広告というのは、、あくまでも看板です。その分野で現状のクリエイティブの役割は『看板が飽きられたから新しくしよう』という感じだと思うんですよ。Flashで作るのは看板なんです。でも我々の意図するUXでは看板でなくて店舗の設計をしなければならない。どういう人が来て、どんな時間を過ごすか、次に来てもらうにはどうすればいいのか。それを考えるのがマイクロソフトのアプローチなんですよ。狭い意味でのデザインではなく、大きな意味でのデザインです。その素材としてSilverlightが位置付けられています。」

春日井「デザインとは表層の意匠を作るだけではないと思うんです。人間工学的な発想や必然性にも関わってくるものだと思います」

Expression3やSilverlight3の世界最速最新情報も公開

――そんなマイクロソフトのWebに対する捉え方や取り組みを伝えるイベントがReMIX Tokyo 09なのですね。このイベントの具体的な見所を教えていただけませんか。

春日井「このイベントはマイクロソフト本社が実施しているMIXの各国版という位置付けです。MIXの内容を各国向けにアレンジして世界各国で開催しています。日本では今年で3回目の開催となるReMIX Tokyo 09では、Expression3やSilverlight3に関する最新情報を日本のみなさまにお伝えできるほか、日本の企業様での活用事例のご紹介を予定しています。またRIA構築をする場合に、ワークフローをどう組むのか? 体制はどうすればいいのか? これらの疑問や悩みへのヒントの提示もあります。今後のWebと大きく関わってくるクラウド技術のWindows Azureに関するセッションも企画しています」

――最後に、このイベントに関心を持っているWebクリエイターたちにひとことお願いします。

春日井「Webはまだ15年の歴史しかないのですが、コンテンツを作る側にはある種の閉塞感があるように感じています。ReMIX Tokyo 09では、参加したクリエイターに『そうではない』という部分を感じて、持ち帰っていただきたいと思います」

池田「Web制作の現状に満足していないクリエイターには、ぜひ来て欲しいですね。従来のWebやPCの枠をはみ出した新しいコンテンツをお見せできると思います」

――Webをはみ出すというと、ARなどがありますが、そういったアウトプットもイベントでは、提示されるのでしょうか?

池田「Webをはみ出すものはあるかもしれませんね(笑)。このイベントは、マイクロソフトやクリエイターの方々にとって、ゴールでなくあくまでもスタートです。クリエイティブのヒントが出れば良いと思います。つまらない仕事の道具としてではなく、自由に楽しくWebと繋がっていくための……」

――今日はどうもありがとうございました。

東京ミッドタウンにて7月16日に開催されるイベント「ReMIX Tokyo 09」。料金は通常価格7,000円だが、マイコミジャーナルの読者は登録コードを入力することにより、特別優待価格3,000円で参加することが可能だ。「ReMIX Tokyo 09」の詳細と特別優待申し込みはこちらから。

撮影:石井健