米Googleが電子ブック(e-Book)の販売に今年末までにも乗り出すことになりそうだ。経済紙の米Wall Street Journal (オンライン版)が6月1日(現地時間)付けの記事で報じている。
同件は先週末に米ニューヨークで開催された展示会のBookExpoにおいて、Googleが出版社らに対して電子ブックの販売計画を公表していたと、米New York Timesが報じたことに端を発する。その後、Wall Street Journal (WSJ)がGoogleに確認をとり、この計画が事実であることを突き止めた。
現在、電子ブックの市場では米Amazon.comやソニーなどが専用端末とともに参入を果たしている。特にAmazonは書籍販売でのそれまでの実績から非常に大きな影響力を持っており、価格決定力などで優位な立場にある。例えば通常であればハードカバーで26ドル近い値付けが行われているベストセラー書籍が、AmazonのKindle向けコンテンツで9.99ドルという単価になっている。こうした経緯もあり、BookExpoで説明を受けた出版関係者らの反応はおおむねGoogleに対し好意的だといわれ、ライバルの出現に期待が寄せられている。出版社らはGoogleの販売システムを利用することで読者への直接的な電子ブック販売が可能になり、販売価格についてもGoogleからの一方的な提示ではなく、最終的に自由な設定が行えるようだ。
販売形態は現在のところ未定だが、前述のAmazonやソニーのように専用端末による縛りがあるわけではなく、Webアクセスが可能なPCや携帯電話、そしてもちろん電子ブックリーダーなどを使って比較的自由な閲覧が可能なようだ。またコンテンツの展開についてもAmazonのように書籍のデータそのものをダウンロードさせる方式ではなく、Webアクセスによる閲覧を前提にして、あとは(オフラインでの)利便性を高めるためにある程度のデータをキャッシュさせる方式を採る。読者はコンテンツを購入して手元に置くというより、コンテンツの永続的なアクセス権を取得するというスタイルだ。
今回の計画は、Google Book Searchでの米著作権者らとの和解を受けてのものとなる。この和解案の影響を受ける日本では一部著作権者らの抗議行動が起こるなど、いまだ混乱のただ中にあるが、こうしたハードルを越えることが電子ブック市場の拡大に求められている。また、こうした電子ブック市場の広がりが予測されるなか、別の新たな動きも起こっている。台湾の組み込み機器メーカーPrime View Internationalは6月1日(現地時間)、少ない電力できれいな紙面情報を電子スクリーン上に再現する技術を持つ米E Inkの買収を発表している(買収額2億1,500万ドル)。Prime ViewはAmazonのKindleやソニーの電子ブックリーダーを開発したメーカーで、同製品の提供元でもある。将来の大市場をにらんだ攻防が始まっている。