ガートナー ジャパンは5月27・28日、都内で「ビジネス・インテリジェンス&情報活用サミット 2009」を開催した。同カンファレンスでは、"企業がパフォーマンスを最大化するためには、いかにして情報を資源化して活用していくべきか"というテーマの下、さまざまな講演が行われた。同社でリサーチバイスプレジデントを務めるジェフリー・マン氏は、SNSやブログといった"ソーシャルソフトウェア"に関する講演を行った。昨今、ソーシャルソフトの扱いに悩んでいる企業も少なくないのではないだろうか。同氏の講演より、企業はソーシャルソフトをどのように扱うべきかについて探ってみたい。
コラボレーションの"緑地化"を進めるソーシャルソフト
マン氏は、これまで企業のコラボレーションは"砂漠化"にあったと表した。これは、企業で利用されているコラボレーションツールが、電子メールと構造化されたコラボレーションツールの2極化しており、この2つのツールを埋めるものがない状態という意味だ。それゆえ、電子メールに依存しすぎる状態が生まれているという。
しかし、ブログ、SMS、共用ブックマークといった新しいメディアがこれらの差を埋めつつあり、"緑地化"が進んでいると、同氏は説明した。このようなメディアは「ソーシャルソフトウェア」と呼ばれる。
同社では、ソーシャルソフトウェアを、「さまざまな機能を持ち、人がかかわる側面すべてにわたって人にアクセスするためのソフトウェア」と定義している。
同氏は、「メールは便利だが、ソーシャルソフトはメールでは対応できない機能を備えている。利用場面と機能に応じて、適切なツールを柔軟に使うべきだ」と指摘した。
企業はソーシャルソフトを使うべきか?
同氏は、企業のソーシャルソフトに対する姿勢は「拒否」、「見て見ぬふり」、「全社的な採用」の3パターンに分けられるが、国内企業の多くは「見て見ぬふり」の状況にあると述べた。欧米では様子見の企業が多く、国内とは事情が異なるとのことだ。
しかし同氏は、「個人的には、企業が従業員のソーシャルソフトのアクセスを禁じるのは間違いだと思う。なぜなら、ソーシャルソフトはさまざまなメリットをもたらし、革命を起こしているから」という。
また、ソーシャルソフトは、「ボリュームを負荷ではなく利益に変えられる」、「大衆のアイディアをベストプラクティスとして集約できる」、「小さなアイディアを多数得られる」といった特徴を持っている。こうしたことは、これまでのコラボレーションソフトでは拾い切れていなかった機能と言えよう。
企業のソーシャルソフトの導入を推進する同氏だが、企業がコンシューマー向けソーシャルソフトを使うことには反対する。例えば、開発中の新製品に関する情報が社外に保存されるのは、セキュリティ上よくない。
「コンシューマー向けのソフトウェアは、Youtubeをトレーニングや製品の告知に使うなど一部の場面での利用に限定し、利用時の的確なポリシーを策定する必要がある」(マン氏)
企業での利用を促進するには、ビジネス利用のソーシャルソフトの提供が必要だという。
ソーシャルソフト導入のためのステップ
同社は、ソーシャルソフト導入について企業に対し提言をしている。直ちに実行すべきは、「自社が新しいテクノロジーをどのように取り込むべきか、それによって仕事の手法がどのように変わるか計測する」ことである。
1年以内には、「従来のシステムを稼働させつつ、新たな可能性の実験を行う」、「この実験を正当化するためにコストを削減する必要から、期待される高いリスク耐性を引き出すべき」だという。
そして、2010年までに実行すべきは、「ベンダーの計画と自社の計画が適合していることを確認する。その際、大手ベンダーにはとらわれない」ことである。
また同氏は、ソーシャルソフトの導入にあたって、IT部門は事業部門に対して どのようなアップグレードが行われ、それにより何が得られるのかを伝え、製品の導入によって10年後の仕事やその手法がどのように変わるのかを想像させるとよいとアドバイスした。
業務を妨げるツールとして、企業では利用が禁止されがちなソーシャルソフトウェアだが、使い方次第で、企業にもたらすメリットは少なくない。一概に拒否するのではなく、特性を見極めたうえで、ソーシャルソフトウェアを使いこなせるかどうかが、企業にとっての課題と言えよう。ベンダーの勢力図も大きな変動期を迎えており、今後、ソーシャルソフト導入を成功に導くにはマーケットのウォッチも欠かせないだろう。