東京都の情報公開・個人情報保護審議会は25日、プライバシー侵害の問題などが指摘されているグーグルの「ストリートビュー」について、同社が5月13日に示した改善案に対し、残された課題はまだあるとするコメントを発表した。

ストリートビューは、2008年8月に日本国内でのサービスが開始された。Googleマップ上で指定した地点をパノラマ写真で表示し、地図の歩行者視点を提供するという機能で、マウス操作で360度全周囲を見渡せるほか、実際にパノラマ写真だけで道を進むといった使い方もできる。だが、道路上から網羅的に撮影して公開するというサービスの性質上、個人のプライバシーがネット上に公開される事態が指摘されている。詳細な写真で現地の様子がよく分かるため、犯罪への悪用を懸念する声も上がっていた。

「ストリートビュー」画面の一例

東京都の情報公開・個人情報保護審議会では、この問題に関し、2009年2月3日に開かれた第39回会合においてグーグルの担当者と意見交換を実施した。その後審議会事務局とグーグルは、4カ月にわたり協議を行った。これを受けグーグルでは2009年5月13日、撮り直しやナンバープレートや表札のぼかし処理、問い合わせ専用ダイヤルなどの設置を行うとした、プライバシー問題に配慮した改善案を発表した

これに関し審議会では、改善案について「一定の評価はできる」と評価している。その上で、25日に審議会の堀部政男会長名でコメントを発表し、以下の点において残された課題があると指摘している。

  1. 個人情報保護法との関係について

  2. プライバシー・肖像権との関係について

  3. 自治体への事前通知・協議について

  4. 地域安全との関連について

  5. 公道からの撮影の徹底について

このうち、1の「個人情報保護法との関係」に関しては、「今回の改善によっても、個人の顔や表札などが明瞭に判別できる画像、自宅や生活状況の画像など、個人情報に該当すると考えられる画像は引き続き提供される。これらについて、個人情報に関する利用目的の通知や特定、適正な取得などを義務付けた個人情報保護法第15条から第18条が適用されるべきではないか」と問題提起。また、本人からの削除の申し出により取得したデータは、削除依頼により個人が特定できるため個人情報に該当することになる。コメントでは、これらの情報が検索可能なデータベースとしてグーグル側により管理されていれば、個人データの保有に該当するのではないかと指摘している。

2の「プライバシー・肖像権との関係」については、「商業地、観光地と住居専用地域を線引きせず、従来どおり、個人の住宅の画像が提供されるが、個人の住居の外観の画像をインターネットで提供することはプライバシーの侵害にあたるか」と検討課題を指摘。また、「本人の事前の許可なく個人を撮影してインターネットで公開することは、仮に顔についてぼかし処理を行っても服装などから本人と識別できる場合は、肖像権の侵害といえるか」と問題を提起している。

また、3の「自治体への事前通知・協議」については、「(自治体への事前通知や協議を行うための)具体的な方法などについて方針を明らかにするべきではないか」としている。

4の「地域安全との関連」では、「ストリートビューの悪用を懸念する地方議会の意見書も多いが、住宅地の公開の適否など、インターネット非利用者を含めた合意形成や広報などの取組みをどう行うか」などの課題について述べている。

コメントでは、こうした課題について、「法律解釈を含む全国的な問題である」として、総務省が今年4月に設置した「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」において、さらに掘り下げた検討を行うよう要請している。