FlickrのAaron Cope氏 |
Yahoo!傘下の写真共有サービス「Flickr」がジオタグをサービスに取り入れ始めてからおよそ2年半が経過した。同サービスに集まる位置情報を備えた写真は1億枚を超えるという。特にスマートフォンが普及し始めてから、その勢いに加速が付いているそうだ。2年連続でのWhere 2.0登場となったFlickrのAaron Cope氏は今回、Flickrに集まる写真を利用したReverse-Geocodingについて語った。マップ上に写真を配置するのではなく、逆にジオコードを基に写真を結びつけてマップを作るとユーザーの行動や内面が現れたマップが出来あがる。
Flickrは位置情報の識別子にWOE(Where On Earth) IDを採用している。ジオタグに同じ地名を持つ写真をまとめて、WOEIDの緯度・経度のポイントが散らばる地域を塗りつぶして出来た形をCope氏はアルファ・シェイプとしていた。その生成にはClustrを用いている。
WOEIDは、大陸、国、地方・地域、郡、市・区、町の6レベルに分類されているので、アルファ・シェイプもこれらの6種類になる。以下は米国(ピンク)とその州(白線)、香港国際空港(青)のアルファ・シェイプだ。
州は実際の形に比較的近いものの、それでもはみ出ている場所が目立つ。アラスカ州や米国全体、香港国際空港は、実際の形から大きくかけ離れている。これは人の行動をベースとした位置情報に基づいているためだ。空港内で旅行者が行動できる範囲は限られ、離陸直前にはカメラを使用できなくなるため、空港のアルファ・シェイプは写真のような形になってしまう。
以下はサンフランシスコ市のアルファ・シェイプである。これも大きく海にはみ出している。サンフランシスコを含むベイエリアでは、人々の生活に港や海が結びついているからだ。それ故にアルファ・シェイプのサンフランシスコこそ、住民の目に映るサンフランシスコの本当の姿とも言える。
サンフランシスコのアルファ・シェイプ |
Cope氏はさらに掘り下げて、アルファ・シェイプの中でも人々の行動が線を形作っている部分だけを分類したところ、いくつかの都市ではドーナッツ現象が見られることに気づいた。以下はパリと東京のアルファ・シェイプだ。今は赤紫の部分がパリと言われているものの、パリッ子にとってはドーナッツの穴部分(ピンク)になる古いパリこそがパリである。
面白いのは、ニューヨーク市のアルファ・シェイプである。同市を構成するマンハッタン、スタテンアイランド、クイーンズとブルックリンよりもずっと大きい。では、よりニューヨーカーの日常的な行動を反映したドーナッツの穴部分はどうかというと、これも実際のニューヨーク市の形とは異なる。ニューヨーク市なのに含まれていない部分があれば、逆にハドソン川を越えたニュージャージー州の一部にも広がっている。住居費が高いマンハッタンに住まずに川向かいのニュージャージー州からマンハッタンに毎日通勤している人が多い。彼らも、自分たちがニューヨーカーであるという意識が強い。それがアルファ・シェイプに反映されている。
アルファ・シェイプが今後、オンライン・コミュニティやわれわれの生活にどのような影響を及ぼすかは未知数だ。ただFlickrに限らず、「従来のツールで対応できなかった情報や、これまで見過ごされてきた情報をマップ化することで、これまで見えなかったものを浮かび上がってくる」と同氏。その価値を引き出せるように、Flickrは http://www.flickr.com/services/shapefiles/1.0 (gzipファイル)で、これまでの全てのアルファ・シェイプを公開している。