ニコンは5月26日、同社精機カンパニーの収益力と競争力強化のため、全世界規模で事業拠点の再編と改革を実行すると発表した。
これは、2008年以降の経済環境の急速かつ急激な悪化により、同カンパニーの主事業である半導体露光装置ならびに液晶露光装置に対する経営体質の強化を図ることが不可欠と判断し、生産、販売、サービスの各段階において、抜本的な固定費削減策を実施することを決定したというもの。
同社精機カンパニーの2009年3月期の業績は、売上高が前年同期比24.3%減の2199億円、営業利益は同81.5%減の80億円となっており、2010年3月期の通期業績予測は、デバイスメーカーの設備投資の抑制と、パネルメーカーの稼働率の不透明さが影響し、売上高は同36.3%減の1400億円、営業利益は330億円の損失となることが予想されていた。
今回の施策では、まず第1に国内の生産体制が再編される。現在4社ある生産子会社では露光装置および装置ユニットの生産を担当しているが、これを2社に再編・統合するとともに、熊谷製作所の生産に関わる要員も併せて適正化を図るとする。
対象となるのは、栃木ニコンプレシジョン、水戸ニコンプレシジョン、仙台ニコンプレシジョン、蔵王ニコンの4社で、2009年10月1日を持って会社分割および合併により、半導体露光装置をニコンの熊谷製作所、栃木ニコンプレシジョンに、液晶露光装置についてはニコンの横浜製作所、同横須賀分室、蔵王ニコンが主に生産を担当する体制となる。
第2に欧米の販売・サービス体制の改革が実施される。同カンパニーの製品は、北米と欧州地域では、それぞれの現地法人であるNikon PrecisionならびにNikon Precision Europeが販売代理権を持つ現地法人として各地域内の販売およびサービス活動を担当してきた。今回の施策により、両市場にまたがる顧客への効率的かつ質の高いアプローチとサポートと行うとともに、同カンパニーの体質改善を目的に、両現地法人の販売およびサービスに関する業務をできるかぎり一体化してスリム化を図るという。
第3に、日本を含むアジア地域のサービス体制の改革が実施される。同社では、アジア地域は日本を含め、各地域ごとに子会社が直販体制で販売を行ってきたが、今回、シンガポール地域を担当してきたNikon Precision Singaporeを縮小し、一部の機能をNikon Precison Taiwanに移管する予定としている。
今回の3つの施策の実行により、国内での生産に関わる要員約2,900名のうち約800名、海外の販売・サービスおよび国内サービスに関わる要員約1,700名のうち約200名がそれぞれ削減対象となる。同社では、これにより約80億円の固定費圧縮が予定されるとしており、2010年3月期にかかる費用として、40億円強の特別損失を計上する見込みとしている。