日本音楽著作権協会(JASRAC)は20日、年に一度の定例会見を開いた。公正取引委員会による排除措置命令について加藤衛理事長は、「曲別の徴収ということになれば相当ダメージを受ける。公取委や放送事業者と協議しながら、ソフトランディングを模索している」と話した。
2008年度の使用料徴収額は2007年度比2.4%減
JASRACの2008年度の事業報告によると、JASRAC管理楽曲の2008年度の使用料徴収額は、2007年度比2.4%減の約1,129億4,700万円。「日本の経済状況が重くのしかかり、2008年の暮れからカラオケ店の閉店が相次いでカラオケでの使用料が減少したほか、テレビCMでの使用料の減少が響いた」(加藤理事長)のが要因。
一方、インターネット配信などの「インタラクティブ配信」での使用料に関しては、2007年度比6.2%増の約88億9,100万円となった。インタラクティブ配信の徴収額構成比は、2002年度は95.6%を占めていた着メロが12.8%に減少する一方、楽曲配信(着うたフル含む)が55.7%、動画が9.2%になるなどの特徴を示した。
2009年度の見通しについて加藤理事長は、「CM使用料減少の影響は2009年度の下半期以降に大きな影響が出る」と、徴収額がさらに減少するとの見通しを示した。
また加藤理事長は、公正取引委員会から排除措置命令を受け、命令取り消しを求める審判請求を公取委に行ったことに関して、「『公取委vsJASRAC』というような構図で見ないでほしい。包括契約の方法を採用している諸外国からも今後どうなるかの問い合わせがあるが、なぜ排除措置命令を受けたのか分からないので答えようがない」と現段階でも、なぜ命令を受けたか理解できないとの見解を示唆。
その上で、「命令は命令なので、どうすれば排除措置命令をクリアできるか、考えているところだ。どういう風にすれば(放送事業における)著作権管理の仕組みを作っていけるのか。公取委から具体的な指示はないが、(包括契約でなく)曲ごとに(使用料徴収を)やれということになったら相当なダメージを受ける。公取委や放送事業者と協議しながら、ユーザーと権利者の視点から見てちょうどいいソフトランディングを模索している」と述べた。
フェアユース規定「商用であれば対価支払いは当然」
また、文化庁著作権分科会の小委員会で始まった、著作権の権利を制限するための「日本版フェアユース規定」の議論に関しては、「頭から反対しているわけではないが、フェアユース規定とは何だということに関する議論が、学者や有識者ごとに違っており、整理されていない。ただ、商用で人の著作物を使う場合には対価を払うのは当然で、それはフェアユースではない。それ以外(商用以外)に使うということに対しては、JASRACとしても柔軟に弾力的に考えていきたい」と話した。
一方、パナソニックと東芝がアナログチューナーを搭載していないDVDレコーダーに「私的録音録画補償金」を課金していないことについて、菅原瑞夫常務理事は、「ソース(録音源)がデジタルかアナログかは関係なく、DVDレコーダであれば全てに課金するのが現在の法律だ。そういう意味では、アナログチューナ未搭載のDVDレコーダーであっても、現行の法律の対象になるのではないか」との見解を示していた。