パフォーマンス - 独自開発製品の統合で検証十分
導入検討時のユーザーの懸念材料であるパフォーマンスについて同社は、「この数年、特にインテル系のCPUは性能がかなり上がってきています。このような背景もあり、ラックマウントサーバでできることはブレードサーバでも実現できるようになっています。その意味では、ひと昔前のような性能面での心配はしなくていいと思います」とのことだ。
同社はブレードサーバに関して「統合サービスプラットフォーム」という考え方を適用しているが、「個々のブレード製品単体ではなく、多くの自社独自開発製品を含めた集合体としてのシステムとして評価してほしい」という。その答えの1つが統合サービスプラットフォームとなる。
特に同社は、自社でストレージ製品も持っており、ストレージに関する技術力も高い。それだけではなく、リモートコンソールやホストバスアダプタ、仮想化技術に至るまで自社開発製品を提供している。これを踏まえると、「特にストレージとの接続性の部分に注力しています」という言葉も納得できる。
サポー ト- 接続性の保証は大きな強み
「個々のモジュールの連携評価能力を持つ企業では、マルチベンダーという環境もアリだと思います。しかし、すべての企業がそこまでの評価能力を持つわけではありません。そうなると、十分な検証が行われ、接続性が保証された製品でシステムを組めるメリットは大きいはずです」という。
つまり、選択肢の多さは、必ずしもユーザーにとってメリットばかりではないというわけだ。システムは「障害が起きて当たり前」の考え方で運用されるケースも多々あるが、同社の基本的な考え方としては、「障害が起きないように、性能評価が十分と判断されるまで検証する」とのことだ。
そんな同社の根底にあるのは「お客様対応」という視点であり、この考え方はシャーシの設計にも生かされているそうだ。
「シャーシの重量だけで100kgを超えてしまうものもありますが、これだと(古いオフィスビルなどでは)シャーシを2、3台搭載しただけで床耐荷重をオーバーしてしまうこともあります。そうなるとブレードサーバのメリットである高集約の実現性に疑問が生じます」
このような市場ニーズを背景に、同社のシャーシは強度を保ちながら徹底的な肉抜きによる軽量化が図られているという。
「BS320の場合は、ブレードをフル搭載しても98kgにしかなりません」
日立の"売り"は何か? - SANブートと障害対応機能
実はブレード製品における同社の最大のポイントはSANブートだという。「ブレード製品自体のベンダーごとの差異はあまりないと思います。しかし当社のSANブート、特に障害対応時に自動的に予備のブレードサーバに切り替える『N+1コールドスタンバイ』機能については、他社製品との差別化要素というだけではなく、実際にお客様からの『いいね』という声が多数寄せられています」
ちなみにこの「N+1コールドスタンバイ」機能は、オフィスへの設置を前提として設計されている100V対応の「BladeSymphony SP」にも実装されている。
運用の効率化という観点でSANブートを重視するユーザーも多いが、「SANブートでも内蔵ハードディスクにスワップ領域が必要である」という誤解も存在するという。
「このような考えをもとに環境を構築しようとすると、導入時に無駄な苦労を強いられるケースもあります」
そのため同社は、ユーザー側の知識やスキルレベルも踏まえ、構築段階から手厚いサポートを提供している。さらに、SANブートをSASで比較的安価に実現できる点もメリットとのことだ。
「仮想化」について
-信頼性を重視なら「Virtage」という選択肢もあります
-回答者-
日立製作所(日立) エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部 製品統括部 主任技師
福井正志氏
仮想化技術導入に際して選択肢が多いのも同社の特徴だ。ユーザーにとっては「信頼性」の面で仮想化技術に対する不安が付きまとうと思うが、この点については「メインフレームの技術を応用した独自開発のVirtageもあります」とのことだ。これはハードウェアで物理/仮想環境を制御するものだが、「アプリケーションには仮想環境での動作をサポートしていないものも多いのですが、これならすぐに物理環境に戻して不具合の原因を探るといった対応も容易」というメリットもあるという。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.9(2009年3月発刊)』
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