衆議院は12日、著作権者の許諾を得ずにネット上で違法配信された映像や音楽のダウンロードを違法とする著作権法改正案を全会一致で可決した。改正案には、違法だと知らずに録音・録画をした人に不利益が生じないよう留意するなどとした付帯決議が付されている。

ファイル交換ソフトや音楽配信サイトを利用した音楽や映像の無断ダウンロードについてはこれまで、コンテンツ権利者から違法性が指摘されていた。だがこれまでは、コンテンツを無断で「配信」することは違法だが、ダウンロード自体を禁じる規定はなかった。

文化庁の文化審議会ではこれに関し、「私的録音録画小委員会」において議論。同委員会での議論を踏まえ、ネット上で無断配信された映像や音楽のダウンロードを、著作権法第30条に定める「私的使用」の範囲から外し、ダウンロード自体を違法化する著作権法改正案を2009年3月10日に閣議決定。その後衆議院に提出され、文部科学委員会で審議を行っていた。

改正案では無許諾配信コンテンツのダウンロード違法化のほか、検索エンジンサービスにおけるサーバへの一時複製(キャッシュ)を合法化する規定や、過去のテレビ番組の著作権者が所在不明な場合における、番組コンテンツの円滑利用を促進する規定も整備。また、障害者向けの利用円滑化のための規定も明記し、視覚障害者向けに著作物の文字を音声にしたり、聴覚障害者向けに著作物の音声を文字にしたりする際は、著作権者の許諾がなくても複製や自動公衆送信ができるようにする内容となっている。

衆議院の文部科学委員会では、この改正案について原案通り可決すべきと決定。さらに、馳浩議員らから提出された付帯決議案についても、全会一致で付することにした。

付帯決議では、違法だと知らずにダウンロードをした人に不利益が生じないよう留意することを明記。さらに、法律改正に便乗した不正な料金請求などによる被害を防止するため、改正内容の趣旨の周知徹底に努めるとともに、レコード会社などとの契約により配信される場合に表示される「識別マーク」の普及を促進することを要請している。

また、「私的録音録画補償金制度や著作権保護期間の見直しなど、著作権に係る重要課題については、国際的動向や関係団体などの意見も十分に考慮し、早期に適切な結論を得ること」などを求めている。

改正案は今後、参議院で審議される。