5月13日から15日までの3日間、東京ビッグサイトで、組み込みシステムの開発に必要なハードウェア、ソフトウェア、コンポーネントから開発環境までが一堂に集う国内最大規模の組込技術の専門展「第12回 組込みシステム開発技術展(ESEC)」が開催されている。
12回目の開催となる今回の展示会場は、特設EXPOとなる「組込みボード・コンピュータEXPO」のほか、特設ゾーンとして昨年から引き続き「テスト・検証ゾーン」「無線通信ゾーン」「組込み画像処理ゾーン」「タッチパネル・ディスプレイゾーン」「モーションコントロールゾーン」「設計・開発サービス/コンサルティングゾーン」の6ゾーンが設けられているのに加え、今年からは、「音声認識・音声合成ゾーン」「電源システムゾーン」「組込み技術者教育サービスゾーン」の3ゾーンが追加されている。
今回の展示会では、ソリューションベンダや代理店などの出展が多く、半導体ベンダのブースが少なく見受けられたが、そうした半導体ベンダの展示を中心にレポートしたい。
ソフト資産をマルチコア向けに転用
富士通マイクロエレクトロニクスは、他の富士通関連企業と合同で富士通グループとしてブースを出展している。主な展示としては、デュアルコアのマルチメディアプロセッサ「FR577」や、FR-Vファミリ向けのソフトウェア資産をマルチコア向けに対応させることが可能なフレームワーク「Fujitsu Embedded Software Framework」、フルHD 60pに対応するH.264Codec「MB86H56」を用いた評価ボードのデモなどとなっている。
"Fujitsu Embedded Software Framework"は、ハードウェア(コア数)に違いがあっても、ソフトウェアの変更をしなくて済むソリューション。ブースでは2コアのFR577と、4コアの試作プロセッサを用いた比較デモを実施。フレームワークを構成するAPRC(Asynchronous Remoto Procedure Call)ライブラリおよびBTO(Bus Transaction Optimize)ライブラリを活用することで、メイン関数内の重い関数を別コアに処理させるほか、バス・トランザクションの競合を低減させることで、既存資産をマルチコアで活用することが可能になることを示して見せていた。
また、MB86H56のデモでは、1920×1080で60p(60fps)の処理に対応していることを示すデモを実施。Codecチップのため、入力画像の処理などは別チップが必要だが、セキュリティ用途やセミプロクラスのビデオカメラなどへの適用が進みつつあるという。
携帯機器向けマルチメディアプロセッサ
NECエレクトロニクスは、他のNEC関連企業と合同で、NECのブースに出展。先日発表したばかりのモバイルAV機器向けシステムLSI「EMMA Mobile 1-D」「EMMA Mobile 1-S」のデモを展示していた。
EMMA Mobile 1-D/Sはピーク電流よりも平均電流の抑制を図ることを目的として開発されたシステムLSIで、トランジスタの動作周波数をダイナミックに変更させることのほか、使用していない回路ブロック部分の電力を0にすることができるパワーセーブモードをONにすることで、消費電流を抑制することが可能。H.264の動画再生デモでは、同モードOFF時で240mA程度であった消費電流がONにすると70mA程度に低減することが示されていた。
また、次世代となる「EMMA Mobile-X」の開発も進んでいるとのことであり、HD動画に対応予定で、今年度内にサンプル出荷までいければ、という希望を説明員の技術者の方は語っていた。
こちらはEMMA Mobile 1-SとWi-Fiチップ、CSRのBluetoothチップを用いた接続デモ(画像をインターネット上からWi-Fi経由でスライド表示しながら、ローカルに保存してある音楽をBluetooth経由でスピーカーに飛ばして再生している) |
このほか、同社ブースでは性別・年齢層の自動推定システム「FieldAnalyst ver2.1」のデモも実施。こちらはNECソフトの製品だが、デジタルサイネージ向けの製品で、カメラを通してリアルタイムで映像から人物を検出。その映像を基に性別・年齢層(0/10/20/30/40/50/60代に分別)を推定、客層別の来場者や退場者数なども計測できるため、状況に応じてサイネージに表示する広告を変化させることなどができるというもの。実際の年齢判別だが、10歳区切りのため、60代が50代になったりする場合もある程度の精度となっているが実際の来場者の判別などには実用可能であるように思われた。