エルピーダメモリは5月12日、2008年度(2008年4月~2009年3月)の決算概要を発表した。売上高は前年度比18.4%減となる3,310億4,900万円。営業損益は前年度の249億4,000万円の損失から1,473億8,900万円の損失、純損益は同235億4,200万円の損失から1,788億7,000万円の損失へとそれぞれ赤字幅が拡大した。なお、年間ビット成長率は前年度の102%にはおよばなかったものの、90%成長を達成している。
同社執行役員CFOの福田岳弘氏はDRAMのスポット価格の動向について、「1Gビット DDR2 800Mbps品、同667Mbps品ともに2008年12月をボトムに一部下落があるものの、上昇傾向となっている。これは昨年秋以降に各社が実施した減産が効果を発揮し、市場の在庫も適正になってきたためと考えている」と語る。ちなみに、5月11日段階のスポット価格は1Gビット/667Mbps品で1.26ドル、1Gビット/800Mbps品で1.30ドルとなっており、第3四半期決算時の価格(1.23ドル/1.12ドル)ならびに中間決算時の価格(0.97ドル:667Mbps)と比べると着実に価格が回復してきていることが窺える。
なお、同社が利益の下支えとする携帯機器やデジタルコンシューマ向けのプレミアムDRAMについては、円高の影響のほか、景気後退に伴う需要の減退などの影響を受けており、2008年度第4四半期の売上高に占める比率は前四半期の44%から6ポイント減となる38%となっており、年間売り上げに占める比率も前年度の55%から12ポイント減となる43%と過半数を割る結果となった。
ただし、同社代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏は、「2009年3月のモバイル向けDRAMが想定よりも落ちなかった」とし、4月に入ってからも伸びてきていることを強調、7月以降はさらに伸びていくことが期待されるとした。また、デジタルコンシューマ向けについても「中国向けが伸びてきている」とし、こちらも市場在庫が片付き、徐々に需要が回復してきているとの見方を示しており、「プレミアムDRAMについても、PC向けDRAMのスポット価格の回復に引きずられる形でモバイル向けなどで一部製品で価格が上昇する場合もある」(同)とするほか、「DRAMの価格は1.5ドル程度までは戻るのではないかと見ている。欲を言えば2ドル~1.5ドルの間で推移してもらえるとキャッシュコストなどの視点から見ると助かる」(同)とした。
また、プロセスの微細化によるコスト削減効果も出てきており、「エルピーダ、Rexchip Electronics、Powerchip Semiconductor(PSC)の3社合計で90%程度のラインが65nmプロセス世代品に移行している(3月時点の割合はエルピーダが75%、RexchipとPSCが100%)」(同)としており、6月ころにはエルピーダのラインの80%程度が65nmプロセス世代品に移行が進むことを明らかにした。
Fabの稼働率は減産後ではあるが2009年は5月まで100%を維持しているとしており、「ワールドワイドでも1-2月がボトム。調査会社の結果では5月の稼働率は77%としているが、実際の感覚ではもう少し低くワールドワイドで65~70%程度のはず」(同)とし、200mmラインや旧い300mmラインなどが稼働していないことを指摘。特に過去15カ月のDRAMベンダ各社の損益とキャッシュポジションの累計額を比較した場合、台湾勢のキャッシュポジションが圧倒的に低いことを指摘、こうした状況下にあれば、Taiwan Memory(TMC)の誕生は必然的とし、同社と連携するエルピーダとしてもプレミアDRAMのローエンド機器向け製品を台湾側の協力を得て開発・生産することなどのアイデアがあるとした。
なお、今年度の設備投資費用はRexchip分を含めて400億円としており、65nmプロセス世代への移行とより先端なプロセスの開発への開発投資に充てるとしている。また、PCで主流となっているDDR3については、「売り上げベースで10%程度を占めているが、チップサイズがDDR2比で2~3%大きくなり、しかもテストコストがかなり増加する。しかし、カスタマはそれにプレミアムを上乗せしてくれないことから、あまり積極的に製造を推し進めるつもりはない」(同)とし、プレミアムDRAM向け製品を今後も主軸として製造を行っていくことを示した。