富士通研究所は、紙に印刷された暗号化されたデータを、携帯電話のカメラを利用して復号化する技術を開発したと発表した。今後は2009年度の実用化、2010年度の製品化を目指す。

携帯電話用の復号ソフトを開発

紙に印刷された暗号化データを復号化するソリューションについては、富士通研究所が昨年6月、すでに発表している。しかし、このソリューションでは、暗号化された文書をスキャナ使って読み込む必要があるため、復号にPCが必要なほか、外出先で読めないので不便という意見がユーザーから寄せられたという。そこで、富士通研究所では普及率が高く、外出先でも閲覧できる携帯電話に目を付け、開発を進めてきたという。

富士通が利用する暗号化は、紙データ全体を電子化し、暗号化したい部分選択、その部分の画像を細分化し、バラバラにするという原理を利用している。そして、それを携帯電話のカメラで読み取り、ソフトウェアで復号する。復号のやり方は、広く普及しているQRコードに近い方式と言える。

紙の暗号化技術

認証は、ソフトを起動する際に入力するパスワードと、暗号画像に埋め込まれたパスワードを照合することにより行う。暗号化したい部分を画像処理して読めなくしているので、情報量は特に関係なく、技術的には、A4用紙1枚すべてを暗号化し、携帯電話で復号化することも可能だという。

実際の携帯電話による復号化

ただ、携帯電話での撮影は、スキャナに比べ手ぶれやゆがみが発生しやすく、復号可能な画像を撮影するためには複数枚の撮影が必要になることから、今回、手ぶれやゆがみがある画像を排除し、もっとも精度のよい画像を抽出する画像選択フィルターを新たに開発、すべての画像を復号化するのに比べ、処理時間を約50分の1にできたという。

今回新たに開発した画像選択フィルター

現在は、Windows Mobile用に開発されているが、今後はSymbian向けに移植するという。

富士通では、機密文書、クレジットカードの写真、印鑑証明などの用途を想定している。印鑑証明については、偽造防止のための特別な紙を利用しなくても、普通紙が利用できるというメリットがあるという。

利用シーン。情報漏えい対策

利用シーン。改ざん検知・防止